2017 Fiscal Year Research-status Report
ポスト個人化社会における人類学的家族研究の再構築:北欧型親族介護を事例に
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16K16963
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
高橋 絵里香 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (90706912)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 家族介護 / フィンランド / 新自由主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、2017年8~9月と2018年2月にフィンランドの高齢者を支える制度外親族介護の進展状況を包括的に明らかにする実地調査を行ってきた。高齢者が自身の暮らしを維持していく上で、自治体の提供する公共サービスの他にどのようなチャンネルを利用しているのか、そうした非公的なネットワークの形成に家族の形はどのように反映されているのか、といった問いを念頭においてインタビューを実施した。また、教会やボランティア組織といった高齢者を支える活動を行っている団体についても参与観察を実施した。こうしたフィールドワークを元に、現代社会において家族の個人化、すなわち家族の集団としての恒久的な持続性が弱まり、個人が「主体的」な選択によって家族を形成することで、従来は持続的で画一的であった家族の形態や機能が多様化が進んでいるという見解の妥当性を検討した。 今年度の調査から、現在地方部において高齢期を迎えている世代においてもライフコースは既に多様化していること、そこには戦争や移住とった経験が大きく影響していることが明らかになった。フィンランドでは戦前から女性の就業が一般的であり、どのようなキャリアを築いてきたのかということが、高齢者達の現在の自己認識や人間関係と大きく影響している。また、子世代における離婚や再婚の増加は、親世代が関係を維持する対象の増加と複雑化に繋がっている。高齢者達は感情的、関係的な距離に基づき、交流や手助けを求める相手を選び取っているのである。 以上のような研究成果について、AAGE(Association of Anthropology, Gerontology and the Life Course)の第10回研究大会、日本文化人類学会第51回研究大会で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調にインタビューを進めており、多様で示唆に富むナラティブを記録することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、夏季・冬季・春季に計2カ月程度の現地調査を行っていくと共に、フィンランドの高齢期家族の様態とケアシステムとの関係、さらに新自由主義的な改革が進展するなかでの変容について考察する論文をまとめていく。
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Causes of Carryover |
2018年度は現地調査に加えて遠方での国際学会に出席する予定を立てており、経費が嵩むことが予測されるため、翌年度分と合わせて旅費を計上した。
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