2019 Fiscal Year Annual Research Report
Anthropological Study on Care Practices and Intercorporeality
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16K16965
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 沙絵 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (80751205)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 情動体験 / 了解可能性 / 伝達可能な理解 / 感覚/知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度はオランダ・ライデンで開催された国際会議でパネルを企画し、これまでの研究成果を発表した。また2018年度の国内会議の概要をパネル参加者と共著で『南アジア研究』に投稿した。その内容は下記のとおりである。 従来の議論は、研究者が感覚の文化的構築に重きをおくか、特定の感覚/感覚スキルがアクターをとりまく環境との相互行為のなかで浮上するダイナミックな過程に焦点をあてるかという点をめぐって展開してきた。両者は「文化」概念や感覚/知覚主体としての人間観において激しく対立する。これに対して本研究は、私たちの感覚的経験の柔軟性・可変性と、そうした経験に形を与える文化的カテゴリーの働きの双方に目を配った記述が必要であると結論した。他者の感覚的な経験に着目する意義は、視覚・言語中心主義的な西洋近代の認知のあり方を相対化する点にあるのではなく、特定の歴史的・社会的状況を生きる人々の生の断面で生じる広義の情動体験を捉え、可能な限り了解可能性を担保した記述を行う点にある。その過程で調査者自身の感覚のあり方は必要に応じて見直され、翻訳の作業がこれにつづく。感覚に留意した民族誌的記述の重要性は、伝達可能な理解を産出するのに寄与しうる記述のスタイルを常に精査する点にあると考えられる。
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Research Products
(8 results)