2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K16966
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 吾郎 大阪大学, COデザインセンター, 准教授(常勤) (20583991)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 身体変容 / 自然と文化 / 自然の人類学 / 医療人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究計画に従って、主として本研究課題における重要概念の検討、フィールドワークの成果に基づく情報収集、比較研究のための準備、および得られた研究成果の発表・公刊を行った。成果として、邦語論文1本(消滅と無為の実践論:自然の人類学における翻訳の問題)、英語論文1本(The Body with Anonymous Organs: Transformation of the Body and the Social in Organ Transplantation)、国際会議での報告2件(それぞれ、CASCA/IUAES 2017およびトロント大学での国際ワークショップ)を行った。そのほか、関係する3本の論文をすでに執筆済みであり、これらは2018年度初頭~中盤に刊行予定となっている。研究計画のうち、フランスの人類学者フィリップ・デスコラらによって進められている自然と文化の大分割理論(le Grand Partage)の再考に関して一定の進捗がみられた。また、フィールドワークで得られたデータをもとに、具体的な事象について、非人間的アクターが関与する行為から生み出される「視点」の扱いについて議論を進めたことが重要な成果となった。またその際に、生物としての人間の死のプロセスと、コミュニティの消滅プロセスを比較するさいに共通する理論的課題が現れることを示したことで、次年度に想定している比較研究の準備を行うことができた。さまざまな比較研究を試みてきたことに付随する成果として、次年度以降、新たに共同研究に参画することとなった。これについては、本研究内容に直接的に関わる実績ではないが、研究を進めるにしたがって新たな研究テーマが生み出されたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の研究調査の蓄積を受けて、順調に研究成果を発表できている。比較研究を実践するにあたって、さまざまな研究に触れ、また調査の範囲を意識的に広げたことは、本研究の進捗にとってプラス・マイナスの両面があった。当初想定していた病院内の民族誌的な研究については、本年度は十分に達成することができなかったが、かわりに、次年度以降に取り組むべきテーマが明確になったことは評価できる。理論的な考察の面では前進がみられ、またそれに関連する成果を公にすることができた。全体的に、研究成果の発表については、当初の計画どおりに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年となる平成30年度は、主題としている「生の人類学」の主要な概念の総括的な整理を行い、これまで実施してきた調査の成果とともにまとめて、関連する学会等で報告する計画である。最終年度には、成果物を単著として刊行する準備を始める予定としていたが、これについても、この間の研究成果をまとめる作業を行うなかで、できる限り進める。比較研究については、平成29年度の成果から、医療とは異なる場面での技術受容や生活環境の変容を扱う意義が見えてきたことに加えて、隣接領域との共同研究の有効性が明らかとなった。平成30年度は、新たに科学技術社会論の分野の研究者と共同研究を開始する予定となっている。本研究課題の推進に支障がないように配慮する必要があるが、一方で、この共同研究の成果は、本研究にとって相乗効果をもたらす可能性があり、新たな展開を期待できる。
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Causes of Carryover |
本年度に限っていえば、予算は当初の予定どおりに使用した。前年の平成28年度から繰り越した分について、本年度に想定していた国際学会への参加が別用務のため困難となり、外国旅費として使用しなかったこと、また、英語論文の執筆に際して英文校閲等のプロセスに想定していたほどの金額がかからなかったため、翌年に繰り越すこととした。PCおよび関連機器の購入を平成28年度に想定していたが、これについては購入の必要なしと判断したため、残額については調査費用として次年度に使用する予定である。
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