2016 Fiscal Year Research-status Report
現代オセアニアにおける地域的図像の流通と集合性の形成をめぐる人類学的研究
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16K16969
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
渡辺 文 同志社大学, グローバル地域文化学部, 助教 (30714191)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 人類学 / オセアニア / 芸術 / 集合性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、フィジーで確立したレッド・ウェーヴ・アート(絵画芸術のスタイルや世界認識)がオセアニア島嶼域へ流通する動態に着目し、各種図像が継承・創出された経緯や流通経路を実証的に解明するとともに、その社会的意味を分析することにある。とりわけ、レッド・ウェーヴが基盤とするオセアニア的「集合性」が、国家・民族的属性に由来する差異を包摂していくメカニズムを明らかにすることをめざす。初年度である平成28年度は、以下の通り文献研究と海外調査をおこなった。 1.文献研究 人類学的芸術論やオセアニア地域研究にかんする文献研究をおこなった。とりわけ、物質文化研究や考古学を横断しながら論じられる「スタイル」の議論や、ポリネシア地域の入れ墨モチーフが現代的文脈においてオセアニア島嶼域へと拡散していった経緯についての考察を深めた。 2.海外調査 米国準州グアム(H28.5~6月/H29.3月)、米国ハワイ州(H28.8~9月)、台湾(H29.3月)、韓国(H29.3月)にて海外調査をおこなった。グアム(H28.5~6月)では、4年に一度開催される最大の地域的祭典「第12回太平洋芸術祭」に参加し、参加者やオーガナイザーへのインタビュー調査および参与観察をおこなったほか、再訪し(H29.3月)、開催後の動向調査をおこなった。汎オセアニア的図像の巨大市場をもつハワイ州では、日用品や衣料品に施される商品の図像収集をおこなった。太平洋芸術祭への正式参加をめざす台湾では、原住民(おもにアミ族)にまつわる図像収集やオセアニア地域との連続性を主張する原住民の言説にかんする資料収集をおこなった。フィジーへの直行便を有する韓国・ソウルでは、オセアニア地域への渡航を促す観光市場の戦略にかんする資料収集をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず海外調査として、太平洋芸術祭というオセアニア的集合性を生みだす地域的祭典において参与観察調査およびインタビュー調査を十分におこなえたとともに、約10か月後に再訪し、その後の動向調査を十分におこなえた。ハワイでの調査では、とりわけ衣料品に用いられるオセアニア的図像のデジタル画像を十分に収集できた。台湾では、オセアニア地域との連続性を主張する原住民の言説や図像生産にかんする資料を収集することができた。韓国での調査は短期間であったが、オセアニア地域への渡航をうながす観光産業の戦略にかんする文書資料を収集することができた。また文献研究においても、スタイルの概念にかんする考察を深められたとともに、とりわけ入れ墨モチーフとの連続性にかんする発見があった。以上の理由による。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度と同様の方法を採用しながら、オセアニア島嶼域において調査研究を継続するほか、オセアニア地域との文化的連続性を有しながらも「アジア地域」と分類される地域の動向も視野に入れる。さらに、レッド・ウェーヴ・アートの動向調査をおこない、制作者たちの生活世界にかんする考察を深めていく。また文献研究などを通して、芸術人類学の理論的基盤を発展させる。
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Research Products
(4 results)