2017 Fiscal Year Research-status Report
現代オセアニアにおける地域的図像の流通と集合性の形成をめぐる人類学的研究
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16K16969
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
渡辺 文 同志社大学, グローバル地域文化学部, 助教 (30714191)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 人類学 / オセアニア / 芸術 / 集合性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、フィジーで確立したレッド・ウェーヴ・アート(絵画芸術のスタイルや世界認識)がオセアニア島嶼域へ流通する動態に着目し、各種図像が継承・創出された経緯や流通経路を実証的に解明するとともに、その社会的意味を分析することにある。とりわけ、レッド・ウェーヴが基盤とするオセアニア的「集合性」が、国家・民族的属性に由来する差異を包摂していくメカニズムを明らかにすることをめざす。平成29年度は、以下の通り文献研究と海外調査をおこなった。 1.文献研究 人類学的芸術論やオセアニア地域研究にかんする文献研究をおこなった。とりわけ、図像表象が政治利用された近代史にかんして考察を深めたほか、物質文化研究における集合性の議論にかんして広く考察を進めた。 2.海外調査 フィジー(H29.8月)、韓国(H29.8月)、米国準州グアム(H29.12月)にて海外調査をおこなった。レッド・ウェーヴ・アートの本拠地であるフィジーでは、首都スヴァ、ロマイヴィチ諸島(おもにレレウヴィア島)、タヴェウニ島などを中心に、適宜アーティストに同行しながら、集合性にかんする参与観察、インタビュー調査、図像収集をおこなった。フィジーへの直行便を有する韓国・ソウルでは、オセアニア地域への渡航を促す観光市場の図像的戦略にかんする資料収集を継続した。グアムでは、オセアニア的集合表象にかんする図像収集を継続したほか、チャモロ系アーティストへのインタビュー調査および参与観察調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず海外調査として、レッド・ウェーヴという、オセアニア島嶼域における地域的図像創出の中心地において十分な資料収集をおこなえた。ソウルでは短期間であったにもかかわらず、オセアニア地域への渡航をうながす観光産業の戦略にかんして多くの図像資料を収集することができた。さらにグアムではレッド・ウェーヴとの連続性を示唆する図像資料を複数点発見できたほか、人的ネットワークにかんする調査をおこなえた。また文献研究においても、人類学的芸術論にかんする考察をおおいに深めることができた。以上の理由による。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度と同様の方法を採用しながら、オセアニア島嶼域において調査研究を継続するほか、東南アジア島嶼国の動向も調査する。さらに、レッド・ウェーヴ・アートの動向調査をおこない、製作者たちの生活世界にかんする考察をおこなっていく。また文献研究などを通して、芸術人類学の理論的基盤を発展させる。
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Causes of Carryover |
葬儀によって予定していた海外調査をおこなえなかったため、やむをえずこの分は次年度課題とした。
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