2016 Fiscal Year Research-status Report
アイヌと和人の文化交渉史に関する研究―明治期の和人によるイナウ奉納習俗を中心に
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16K16971
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
今石 みぎわ 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 無形文化遺産部, 主任研究員 (80609818)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イナウ / 北前船交易 / アイヌ文化史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本州の社寺に奉納されたイナウは、これまでに石川県で9点、青森県で27点、岩手県で1点が確認されている。初年度である本年はこれらのイナウに関する調査・分析を進めるとともに、類似資料の所在調査を行った。また、研究協力者等を通じての情報収集や、基礎的な文献調査を実施し、年度末には研究会を実施した。 実地調査として、研究協力者である北原次郎太氏(北海道大学アイヌ・先住民研究センター)、戸澗幹夫氏(石川県立歴史博物館)とともに、岩手県大船渡市、青森県下北半島、北海道余市町などで調査を行った。このうち2016年6月に実施した岩手県大船渡市の尾崎神社の調査では、御宝物「いなう」が北海道道東地方の形式を持つイナウであること、尾崎神社が近世から重要な海上信仰の拠点であったことなどが明らかとなり、今後、イナウの来歴について検討するための素材を得ることができた。 また、石川県の奉納イナウについては所有者の協力を得、専門機関での樹種同定を行った。その結果、これらのイナウの材質が、現在でもイナウ材として頻用されるミズキとヤナギである可能性が高いとの結果を得た。 2017年2月には北海道で研究会を開催した。研究協力者と情報共有をはかるとともに、近世・近代アイヌ史の専門家から幕末のアイヌ場所における和人とアイヌの関わりの在り方や、イナウの用いられ方について、新たな知見と助言を得、今後の研究の方向性を再検討する機会を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である本年は、基礎資料の収集や、現存する奉納イナウの物的調査など、三年間の基盤となる調査研究を計画通り遂行することができた。また、研究会の開催を通じて、新たに近世史、近代史の分野の専門家から有意義な助言を得ることができ、今後の研究の展開について検討・議論することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
実地調査として、引き続き研究協力者と共に類似資料の所在調査に当たる。また現存する奉納イナウについては、初年度の物的調査の成果を踏まえ、奉納の背景について文献調査・分析や、聞き取り調査を進め、イナウがもたらされた経緯の解明に努める。 また研究協力者や専門家を招いた研究会を開催し、成果や課題の共有と議論の深化を目指す。特に今年度は北前船交易やアイヌ場所の実態等、歴史的背景に焦点を当てることで、奉納イナウについてのより多角的・立体的な理解を目指す。
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Causes of Carryover |
日程の都合上、1件の実地調査(岩手県大船渡市尾崎神社の追加調査)を次年度に行うことにしたため、その経費(旅費等)を次年度に繰り越した
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実地調査(岩手県大船渡市尾崎神社の追加調査)の旅費および資料複写代等の必要経費として用いる
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Research Products
(2 results)