2016 Fiscal Year Research-status Report
ザクセン=マクデブルク法圏における法の実態――『ハレ参審人文書』を例として――
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16K16973
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 団 京都大学, 法学研究科, 准教授 (30612387)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ザクセン=マクデブルク法 / マクデブルク / ハレ / 参審人 / 参審人文書 / 中・東欧 / 都市法 / 参審人団 |
Outline of Annual Research Achievements |
H28年度は、本研究計画の主要な対象となっている『ハレ参審人文書』、とりわけその未刊公部分についての調査が中心的な作業となった。そのための現地調査を行った他、同時代の史料との相互比較なども行った。『参審人文書』の校訂に加え、そこに登場する具体的な事件また訴訟当事者を整理し分類するという作業も行った。この際、訴訟当事者についてはリスト化すると共に、当時の新規市民の登録台帳の写本を調査し、『文書』に登場する訴訟当事者との比較・検討などの作業も行った。 また、同『文書』に関する既存の書誌学的な情報を再検討することで写本の年代をより精確に割り出すことができた。これには、『文書』の内容だけではなく、史料固体の分析(綴じ方等、史料の筆跡や綴り・方言の検討)なども含まれる。さらに、同『文書』が成立した当時の市史、裁判制度史、政治史などの再検証により、この史料が持つ法史学的な重要性をさらに際立たせる諸要素を発見することができた。 こうした、史料そのものに関する作業のみならず、H28年度は、この史料と類似する史料ジャンルに関して多くの知見を有する研究者との意見交換により、本研究計画を進める上での多くの知見を得ることができた。中でも、現在のポーランドにある地域の中世都市の裁判文書に関して校訂を行っている研究者との意見交換は、同種の史料を扱う本研究計画にとって多くの知見をもたらした。これは次年度に予定している活動とも大きく関連する故に、計画前進に積極的な意味をもつ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度で計画していたのは、史料全体の網羅的な分析であったが、今年度の作業を通じて行われたのは、未刊行史料の校訂作業をおおむね終了させるというところまでであった。しかし、とくに未刊行部分に関しての目録作成作業が完了まで後一歩のところまで進んだということが重要である。というのも、この目録作成は、史料に登場する人物・案件を相当程度具体的に分類・整理するという作業を前提としており、この作業が進んだことは、計画全体の進行を進める上で重要なポイントといえるからである。 さらに、関連分野の経験ある研究者との意見交換ができたことも、計画の進捗状況に大いにプラスに作用した。よって、計画はおおむね順調に進展しているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、H29年度に予定されていた作業を行う。具体的には、文書全体を通じた網羅的分析であるが、前年度からの残りの部分や想定より多かったために、この作業は当初の予定よりも多少はずれ込む可能性がある。よって、他の都市の同種の史料との比較分析という作業を始めるのは、それに比例して遅くなる可能性がある。但し、初年度は目録作成等の作業が予定よりも進んだために、研究計画全体としては順調に進めることができると考えている。
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Causes of Carryover |
3月の文献購入で、他の経費で一部充てることができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費と合わせて、研究に必要な文献資料等を購入する予定である。
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