2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K16974
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 健 京都大学, 法学研究科, 教授 (70437185)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ローマ法 / 遺贈 / 担保 / 相続 / 古代 |
Outline of Annual Research Achievements |
古代ローマ法における相続法制、特に遺贈の実務を検討する課題を進めた。特に、古代ローマにおける遺贈文化について、経済史の視点を借用した論考を完成させた。 こうした着想を得るべく、国際学会や国内の学会・研究会に出席した。その際、討議には積極的に参加し、論点整理に努めた。その上で、上記の古代遺贈文化、特にエリート層による奴隷解放とその相続人指定に関連する係争物評価にまつわる特殊な法実務に関して、書籍掲載予定論文を脱稿した。 ローマ相続法に新たな光を当てるU. Babusiaux, Wege zur Rechtsgeschichte: roemisches Erbrecht (2015)については精読を9割程度まで終えた。本研究の最終年度に当たる次年度には、通読を終える見込みである。その著者が編集した英語論文集に寄稿した論文において、遺贈に関する問題を扱った。古代ローマでは被相続人が遺言で指定した相続人に、遺贈義務が課された。これに対し、相似形をなす現代日本の最高裁判例を分析し、相続人と受遺者を同視する混乱を指摘した。 また、3月に南山大学で開催されたローマ法に関する講演会では、招へいされたフランス人研究者の講演原稿について、共訳の形で邦訳を担当し、事前に発表内容を配布した。在地の伝統的都市制度とこれに基づく裁判制度が、主都(首都)ローマの民会立法その他に由来する中央の「ローマ法」によりどの程度、如何なる影響を受けたか、という観点から、これを二次的ルールとの関係で捉え直す同講演は、追って雑誌に翻訳として公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
古代ローマにおける遺贈法制と、その現代日本への反映について、最高裁判例を素材に検討した英語論文を脱稿した(但し、刊行が新年度に遅れている)。 また、経済史の観点から、エリート層による都市への遺贈文化が古代ローマの社会生活を支えたとの視点を取り込み、奴隷の相続に注目した論文を投稿した(但し、刊行は新年度の予定である)。
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Strategy for Future Research Activity |
最新のドイツ語相続法文献を一旦読了し、その新視点、即ち民会立法、法解釈実務、そして両者を修正する皇帝の政策介入措置という三層構造を踏まえ、古代ローマにおける遺贈に際し求められる担保の実相に迫る論考を脱稿させる。 その前提として、引き続き、国内外における学会・研究集会に参加し、口頭報告を行なうと共に、他の研究者による講演・報告に関し討議を交わすことで、論点を深化させる。
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