2017 Fiscal Year Research-status Report
環境規制法実施下での遵守・交渉・法の実現に関する経験的研究
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16K16975
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
平田 彩子 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (80547810)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 規制法の実施・執行 / 経験的法学研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,被規制者側での法遵守行動,および曖昧な法に対する対応について,文献調査とともに経験的調査を実施した. 経験的調査では,第一に,環境規制対象の企業に対しインタビュー調査を実施した.事業者内での環境規制コンプライアンス体制,曖昧な法規定に対する対応,関係行政部署とのやりとり,法に対する理解や期待といった項目を中心に聞き取り調査を実施した.第二に,環境規制対象となっている事業所に対し,質問票調査を実施した.事業所での担当部署のリソースの程度や,曖昧な法規定に対する対応,関係行政部署とのやりとりの評価等について調査を実施した. 文献調査では,曖昧な法規定に対し,被規制者がどのように法の意味を構築するのかに関する一連の研究,そして現場行政部署研究を網羅的に収集,分析したことに加え,被規制者内部の組織ダイナミクスを把握するため,組織エスノメソドロジー研究の分析にも注力した.被規制者である事業者も,その内部での部署間関係によって法遵守の判断や法の意味構築行動が異なり,事業者内部のダイナミクスや関係者の相互作用性を理解しない限り,規制法の意味構築や遵守の理解は図れないこと,被規制者を一人のアクターとして理解する従来の理解では不十分であるという結論に至った. 研究業績としては,現場行政部署研究から発展させた論文「分析枠組みとしてのストリート・レベル・ビュロクラシー ―「第一線裁判官」という理解は可能なのか―」(『宮澤節生先生古希記念 現代日本の法過程(上)』)に加え,法と経済学会 “Regulatory Ambiguity: a pilot survey of regulated entities’ perspectives”,および,北海道大学法理論研究会定例研究会「あいまいな法規定をめぐる現場自治体と事業者――規制実施の正当性を求めて」を行なった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究進捗状況は,非常に望ましいと判断する.被規制者たる事業者に対し,インタビュー調査,質問票調査ともに,研究協力者からの快諾を得て実施できたことは,本研究課題を遂行するにあたり決定的に重要であった.論文の公表,研究報告も着実に行なった.年度途中から産前産後育児休暇に伴う研究の中断を行なったにも関わらず,研究進捗は着実に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度では,産前産後育児休暇に伴う研究の中断からの再開後,さらに文献調査を進め,理論面での研究の深化を目指すとともに,追加的な経験的調査の実施を目指す.海外学会での研究報告など,積極的な研究活動を行なって行く.
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Causes of Carryover |
出産・育児による研究の中断および延長を申請した.よって,研究遂行期間を一年延長している.
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