2017 Fiscal Year Research-status Report
オーストラリア移民法における不服審査制度―法政策的観点からの比較研究
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16K16980
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
坂東 雄介 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (50580007)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 移民 / 難民 / 出入国管理法 / 外国人 / 国籍 / 行政不服審査 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.日本における入管法上の不服申立制度 平成29年度は、日本において入管法上の不服申立制度が機能していない制度的原因について分析した論文を公表した。入管法では、当初の制定意図から離れて、不服申立制度が事実上在留特別許可を得るための手続の一環となっている点を指摘した。なお、論文は、平成28年度に北海道大学公法研究会で同内容の発表した際に頂戴した批判を踏まえ、大幅に修正したものである。 2.オーストラリア移民法における不服申立制度 平成29年度は、オーストラリア移民法における不服申立制度の現状・機能について、学説・裁判例などの分析を通じて明らかにする研究を行った。オーストラリアでは、移民法に関する不服申立制度は、以前は一般の行政不服審判所から独立した機関が行っていたが、2015年改正により、行政不服審判所に統合され、審判所内の移民・難民部が扱うこととなった。これに伴い、移民・難民の不服審査であっても、特別法による規律はあるが、一般法の枠組みが課せられることとなった。その結果、移民法でも審理の在り方について従来とは若干の変化が見られる。そして、オーストラリアでは、一般に、不服申立は、原決定者と同じ立場に立って審査を行う方式が採用されている(妥当性審査と呼ばれる)。原決定者と同じ立場に立つため、原決定の承認・取消しだけでなく、変更も可能である。そして、移民法では不服審査の際にガイダンス決定と呼ばれる指標となるモデルが参考とされている。他方、移民法上、不服申立に不満があり、裁判所に提訴した場合、裁判所は、行政の裁量を尊重した上で、その判断過程を審査する方式が採用されている。 上記の内容の論文は、80%程度書き上げたが、細かいところで修正する必要があり、他者からの批評を踏まえた上で、平成30年度には公刊する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
オーストラリアの移民法上の不服申立制度の概要について明らかにする研究に思いの外時間がかかった。理由としては、2015年行政不服審判所法改正を主要な課題として扱っていたため、論文執筆中にも新たな重要な資料・論文が次々と公表されており、その読解に時間を要したためである。また、オーストラリア平成29年度中にはオーストラリアを訪問し、資料収集、オーストラリアの研究者へのインタビューを行う予定であったが、先方の都合によりスケジュールが合わず、断念することになった。これは平成30年度に後ろ倒しにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.オーストラリア移民法上の不服申立制度の分析 平成30年度後半は、オーストラリアを訪問し、日本国内では入手困難な資料の収集を行う予定である。そして、シドニー大学、またはオーストラリア国立大学を訪問し、研究者から研究内容についてレビューとアドバイスを受け、それを踏まえて論文を公表する予定である。 2.日本における難民認定に関する不服申立制度と審理の在り方についての研究 平成30年度前半は、日本における難民認定制度の不服申立とその審理の在り方について研究を行う。これは、平成28年度に下された名古屋高裁の判決を素材とするものである。この判決は、直接には難民認定の証明責任の分配に関するものであるが、その内容は、難民認定における調査に関する責任の所在、難民認定の方法、不服申立における審理の在り方にも波及するものである。平成30年5月26日の移民政策学会にて報告し(既に報告することは決定済み)、そこでいただいた批評を踏まえ、修正の後、論文として公表する予定である。 3.日本とオーストラリアの比較・検討 平成30年度は、研究最終年度であるため、同研究の内容の総まとめとして、日本とオーストラリアの比較分析を行い、日本の入管法上の不服申立制度をより実効的にするために、どのような方法を取るべきなのかというテーマについて論文を執筆する予定である。
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Causes of Carryover |
主にオーストラリアへ訪問することができなかったため。これは、オーストラリア移民法上の不服申立制度についての研究が遅れたこと、そして先方の都合によりスケジュールが合わなかったことに起因する。平成30年度は、8・9月の夏休み期間を利用して、オーストラリアを訪問する予定である。
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Research Products
(1 results)