2019 Fiscal Year Annual Research Report
Another Aspect of the Early Modern Natural Law Theorists
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16K16983
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福岡 安都子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80323624)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近世自然法論 / 主権・人権の歴史 / ヒストリオグラフィ / 西洋立憲主義 / フベルス / 聖書解釈 / 良心の自由 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画の最終年度として今年度は、まず6月の国際学会において、政治的含意を含んだ初期近代の聖書アーギュメントをどのように理解するかにつき、論者間の対抗を比較分析する手法の有効性を具体例を通じて解説する、総括的内容の報告を行った。 これに対し、続く7月のもう一つの国際学会においては、従来の研究を下敷きにしつつも、むしろ実験的内容の報告を試みた。即ち、スピノザに見られる人間心理法則への強い関心が、国家・教会論の重要トポスの一つである内外二分論への批判として展開されている点を取り上げ、それが、グロティウスやホッブズによる一種法学的な内外二分論解釈への批判となっており、また、異なるタイプの自由観の基礎ともなっている点を指摘した。この報告は同時に、ホッブズの社会契約論とスピノザのそれとの差異(また、スピノザの『神学・政治論』と『国家論』の差異)を如何に理解するかにつき、フランス系スピノザ研究の有力説に再考を促す試みともなった。 さらに、フベルスの国家・教会論について、二つの英語論文の執筆に従事した。即ち、まず、主著De jure civitatis libri tresのjus circa sacra論の中で展開される、ギリシャ教父エウセビオスのテクストについての解釈論議を取り上げ、そこで明示的・黙示的に引用される同時代文献に調査範囲を広げた。また他方で、フベルスの伝記的事項を再度洗い直し、さらに、フベルスが1680年台前半に参与した、大学に舞踏教師を配備することの是非を巡る時事的論争について、分析を行った。以上の作業を通じ、フベルスの思想に占める良心概念の背景や、その同時代的意味合いが、従来よりも立体的に理解できるようになった。 これらの成果は、今日に言う人権の概念が、当時の公法学においてどのように理論化されたかについて、重要な示唆を与えるように思う。
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Research Products
(5 results)