2017 Fiscal Year Annual Research Report
A Sutudy on Ploblems of Intellectual Property Taxation by Japan-U.S. Tax Law's Comparative Study
Project/Area Number |
16K16987
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
谷口 智紀 島根大学, 法文学部, 准教授 (50634432)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 租税法 |
Outline of Annual Research Achievements |
知的財産権取引をめぐる租税回避の問題に絞って、私法取引に対する租税法の対応の現状と問題点を明らかにした。租税回避の問題は知的財産権取引の固有問題ではなく、租税法の基本論点でもある。 具体的には、財産評価基本通達・総則6項の適用をめぐる問題、「特別の事情」の判断において租税回避の目的という主観的要素を重視することの可否を検討した。 総則6項は、租税公平主義の視点から、時価の客観的減価要因が生じていたにもかかわらず評価通達を形式的に適用することにより納税者の担税力が過大に算定されることを避けるために、想定外の時価の下落事情が事後的に生じた場合の救済措置と位置づけられてきた。実体的要件である「著しく不適当」と、手続的要件である「国税庁長官の指示」という2つの適用要件を充足する場合に限られて適用されるべきものであった。「著しく不適当」とは、課税物件である相続財産の価格を確定する要件であることから、課税要件明確主義の統制下に置かれ、納税者に租税回避の目的があったことを理由に同規定を適用すべきではない。 ところが、租税行政庁は租税回避の目的が認められる場合には、総則6項の適用が認められるべきであるとの立場に立って、裁判例もこれを追認し、総則6項の適用基準である「特別の事情」の判断において、租税回避の目的という主観的要素を重視して判断を下していた。総則6項の適用の判断に主観的要素を持ち込むことは、租税行政庁による通達の使い分けという通達課税の問題を引き起こすおそれがある。 例外的な定めである総則6項が不明確な基準により適用されることは、相続財産の評価における租税法律主義の予測可能性の視点から問題であるとともに、租税公平主義の平等取扱原則に反するものである。現状の総則6項の適用には極めて看過できない状況が見られ、租税法律主義の視点からの速やかな法的統制がなされるべきである、と明らかにした。
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