2016 Fiscal Year Research-status Report
「活動的な大統領の時代」のモーリス・オーリウの公法学
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16K16989
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小島 慎司 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 准教授 (00468597)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 憲法学 / 制度 / 議院内閣制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,「きちんとした論証が重ねられた本格的な論文」の執筆のために必要な文献の渉猟・読解のために申請された。本年度には,全体の論文のうち,前半部分,つまり,モーリス・オーリウの大統領選出過程公開論の前提を探求する作業を行った。具体的には,何事かを公法的な要請として公開するという場合に,その理由が何かについて,当初予定していたように,オーリウの引用や関連する文献をたどっていった。当初必ずしもつまびらかにしておらず,勉強の結果として明らかになった点としては2点ある。 第一は,代表の観念との関係である。代表的なrepresentatif組織であることが公開であることの理由となっていることに気づき,その関連性の根拠を,ホッブズやルソーにたずねた。要するに,代表者は公益のために正しく行動する者であり,公開もまた公益のために正しく行動させるためのものであるということが連関点なのであるが,それをいかに構成するかに論者の工夫の特徴が見て取れた。 第二は,これは必ずしも,本年度の課題ではなく次年度以降の課題に関わる点であるが,ウォルター・バジョットの研究とフランス憲法学の民主政研究との関係である。当初からバジョットのいわゆる一元論が,フランスに影響したことは知っており,それが単純な影響ではなく,屈折を伴ったものであることにも気づいていたが,その後,バジョットの進化論的な社会認識も影響があるのではないかという着想を抱いている。このあたりは,次年度以降に,もう少し具体的に明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに研究実績に書いたことと重なるが,当初予定していたように,大統領選出過程公開論の根拠を探求した結果として,一定分量の原稿を執筆した。必ずしも十分な成果とはいえないが,普段の原稿よりは丁寧に論証を積み重ねた論文となっていると思われるために,おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,全体の研究計画の後半部分にあたる,大統領公選論の根拠を検討する予定である。大統領公選論は,ブーランジェ事件を彷彿とさせる禁断の主張であったと思われる。二元的議院内閣制論と公選論が果たして整合するかについては,レズローブの不整合説とオーリウの整合説との間で違いがあり,ミルランの失敗はレズローブ説の懸念の正しさを証明する形になったように見える。レズローブについても深く調べることで,オーリウがなぜ公選論を可能と考えたかを描いてみたい。
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Causes of Carryover |
バジョット研究を進める関連文献を購入する必要が生じたが,これは本年度というよりも来年度の研究計画に含めるべきであるため,来年度に書籍購入費用を残しておきたいと考えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
バジョット研究の書籍の購入のために使用する予定である。
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Research Products
(1 results)