2017 Fiscal Year Research-status Report
「活動的な大統領の時代」のモーリス・オーリウの公法学
Project/Area Number |
16K16989
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小島 慎司 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 准教授 (00468597)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 憲法学 / 制度 / 議院内閣制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度には,当初の予定どおり,モーリス・オーリウの戦間期の大統領公選論について勉強し(『公法原理』や『憲法精義』などの著作。それぞれ2版がある),合わせて,オーリウと同時代の仏独のテクスト(レイモン・カレ・ド・マルベール,ロベルト・レズローブ,カール・シュミット,ルネ・カピタン及びそれについての研究文献)についても読解した。 議院内閣制については,元首と議会との均衡を重視する二元論と呼ばれる理解と,内閣の議会に対する責任を重視する一元論という理解があることが知られている。現在の感覚からすれば議院内閣制は民主政の一類型と考えられているが,古典的には民主政とは相容れないと考えられていた。つまり二元論が古典的であったのである。このような常識からすれば,元首を公選にする,つまり,大統領を公選にするということは,民主政に近づくことを意味するのだから,議院内閣制を危機に陥れるはずである。他方で,二元論を根拠のないドグマであると論難する立場もあった。ミルキヌ・ゲツェヴィッチらの一元論はこの立場である。これにもいくつかのバージョンがあるが,民主化の現実を受け容れざるをえない状況において,徐々にこの立場が有力になっていった。大統領を公選にしようというのは素朴に考えるとこの現実容認の立場に見える。しかし,オーリウは,奇妙なことに,二元的議院内閣制論に立ちながら公選論の導入を支持した。本年度はこうした提案が,当時の議論の文脈において持った意味をある程度明らかにすることができた。 当初の研究計画では,奇をてらわず,丁寧な論証を行った長めの論文を書くことを特徴としていた。そこで,以上の準備作業に続いて,これまでの研究成果を論文の形にまとめた。現在の所属機関の紀要は,所属する研究者の論文を優先的に発表することができる状況にあったので,思いのほか早く公表を進めることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
すでに見たように,思いのほか順調に論文の執筆が進んだため。
|
Strategy for Future Research Activity |
民主政の進展は,均衡型の二元的議院内閣制にとって危機であったことを本年度は描き出した。では,民主制の下で具体的には何が問題で,いかなる処方箋が可能なのか。最後の1年度はこの点を検討したい。
|
Causes of Carryover |
来年度に積み残したテーマの調査に使用したいと考えたため。
|