2016 Fiscal Year Research-status Report
行政による法の適用の再構成―ドイツにおける動態的・創造的理論の検討
Project/Area Number |
16K16991
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
高田 倫子 中京大学, 法学部, 准教授 (80721042)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 法治国家原則 / 行政裁量 / ドイツ公法学 / 規整行政 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来、行政の法的覊束として静態的・硬直的に捉えられてきた行政と法及び法律との関係について再検討を行い、行政による法の適用の動態的・創造的理論の構築を目指すものである。 初年度である平成28年度は、ドイツ公法学の研究動向を明らかにすることに努めた。すなわち、法治国家原則に基づき、行政の厳格な法的覊束が要求されてきたドイツにおいても、我が国と同様に規律密度の低い法律が増大しており、行政による法の創出を普遍的現象として捉えようとする傾向が顕著に見られる。もっとも、こうした新たな傾向においても、行政と法及び法律との関係の捉え方は一様ではなく、複数の異なる理論が展開されている。そこで、本研究においては、これらの理論の共通点・相違点を正確に把握し、相互関係を解明することを試みた。 具体的には、第一に、新たな傾向の一つであるハンス・ケルゼンの法段階説を継承し発展させようとする学説について調査を進め、国内外の研究者らによる同説への評価を参照しながら、詳細な検討を加えた。本年度の後半には、その成果をとりまとめ、研究論文として公表した(「ドイツにおける法段階説の受容と展開」中京法学51巻4号)。第二に、次年度に行う具体的な法領域に関する研究の準備として文献を収集し、関連するテーマを扱った研究会に参加した。第三に、3月に国際シンポジウム「東アジア法律家会議」において行政裁量の基本権統制に関する報告を行う機会を得ることができ、ドイツの研究者及び東アジア各国のドイツ法研究者、実務家らと意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度の目標は、行政による法の適用の動態的・創造的構成に関するドイツの学説の把握を行うことであり、その一部は達成することができた。更に、その成果を研究論文として公表することもできた。しかし、この作業に予想以上に時間を取られたため、現在のドイツの議論を理解するためには不可欠であるヨーロッパ法及びヨーロッパレヴェルの機関との連関については、立ち入った検討を行うことができなかった。この点については、次年度に、具体的な法領域を素材としつつ、研究を行うこととしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、これまでの研究において得られた成果を元に、具体的な法領域について研究を行う。その際、前年度から積み残した課題として、ヨーロッパ法及びヨーロッパレヴェルの機関との連関を視野に入れ、それが行政による法の適用の理論にどのように反映されるかを検討する。平成29年度の前半は、文献の収集及び講読に充て、後半に、その成果を研究論文としてまとめる。8月又は9月に、当該分野に詳しいドイツの研究者に現地でヒアリング調査を実施し、研究の推進に役立てる。
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Research Products
(3 results)