2017 Fiscal Year Research-status Report
行政による法の適用の再構成―ドイツにおける動態的・創造的理論の検討
Project/Area Number |
16K16991
|
Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
高田 倫子 中京大学, 法学部, 准教授 (80721042)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 公法学 / 行政裁量 / 金融市場監督 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、前年度に行った理論研究の成果の公表に努めると同時に、具体的法領域における理論の展開に関する研究に着手した。すなわち、前年度の研究から、行政による法の適用の動態的・創造的把握に関するドイツの学説には、複数の見解が存在することが明らかになった。それらはいずれも理論的に説得力を有するものであったが、特に裁判的統制のあり方に関して、異なる帰結が導かれる可能性があった。そこで、これらの見解の相違が特に顕著になると思われる経済法、とりわけ金融市場の監督を素材として、更に研究を進めることとした。 具体的な研究実績は、以下のとおりである。 第1に、前年度の研究成果の一部として、国際シンポジウム「東アジア法律家会議」での報告原稿に加筆・修正したものを、Ritsumeikan Law Reviewに公表した。また、「中部憲法判例研究会」において、前年度の研究により明らかになったドイツの学説の状況について報告を行った。研究会では、憲法研究者を中心とする参加者との活発な議論を通じて、有意義な知見を得ることができた。 第2に、具体的な法素材である金融市場の監督に関して、研究成果を「大阪公法研究会」において報告した。同報告では、近年のヨーロッパにおける金融市場監督の方針転換と、それに伴う監督組織の改組をテーマに取り上げた。ドイツ公法学に詳しい参加者から、金融市場監督を公法学の従前の枠組みにどのように位置付けるべきかについて、貴重なコメントを得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一定の研究成果を上げることはできたが、計画どおり研究を進められたとは言い難い。その理由は、第1に、平成29年度の前半は、前年度の研究成果を公表するための作業に費やされ、当初予定していた研究を遂行することができなかったからである。第2に、外在的な事情ではあるが、勤務先の大学が変わることになり、平成29年度の後半は、それに伴う諸手続に思いのほか時間をとられた。その結果、金融市場の監督に関しては、その組織・作用の概略を調査するにとどまり、前年度の研究成果である一般理論との関連を解明するに至らなかった。補助事業延長申請が承認されたため、残された課題は次年度に取組むこととしたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、積み残した課題として、金融市場の監督の公法学上の位置付け及びそれに対する裁判的統制のあり方について研究を行う。10月よりドイツにおいて在外研究を行う機会を得た。この機会を活かして、ドイツの研究者へヒアリング調査等を実施することにより、本研究の推進に役立てたい。
|
Causes of Carryover |
研究計画に遅れが生じ、補助事業期間を延長したため、平成29年度分のうち一定額を次年度に繰り越すこととした。次年度使用額は、主に図書の購入と旅費に充てる。なお、旅費については、当初その大半をドイツ出張のために使用する予定だったが、10月から在外研究で当地に滞在することとなったため、これは不要となった。変更により生じた金額は、日本及びドイツ国内の旅費に使用する。また、勤務先が変わり、文献収集の必要が新たに生じたため、図書費は当初よりも増額する。
|
Research Products
(1 results)