2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K16998
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
小寺 智史 西南学院大学, 法学部, 准教授 (80581743)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 規範の柔軟性 / 国際労働法 / 開発の国際法 / ASEAN / 国内実施 / 規範の柔軟性 / 実質的平等 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に3つの観点から研究を進めた。第1に、国際労働法における規範の柔軟性研究を進めるにあたり、既存の研究を改めて確認する作業を行った。その結果、2004年に公刊されたP. Politakisの論文以降、少なくとも国際労働法の観点からは、規範の柔軟性に関する主要な研究が存在しないことを確認した。第2に、開発の国際法に関する近年の議論の分析である。国際労働法における規範の柔軟性は、1960年代以降、開発の国際法の文脈において行われてきた。1980年代後半以降、同法に対する学問的関心は急速に低下し、それに伴い、同法における規範の柔軟性研究も衰退した。しかし、近年、フランス語圏において、開発の国際法の再燃とも呼ばれる現象がみられ、規範の柔軟性研究についても一定の進展があることが予想された。そこで、本年度は、かつて開発の国際法研究の中心地のひとつであった、南フランスのエクス=マルセイユ大学に客員研究員として滞在し、同法をめぐる近年の動向及び規範の柔軟性の意義について研究を行った。第3に、ASEAN地域における規範の柔軟性の国内実施に関する予備的調査である。規範の柔軟性が各国国内法においてどのように具体化されているかを検討すべく、本年度はASEAN各国の労働法制の予備的調査を行った。同調査は主に文献に依拠して行ったが、ASEAN地域で活動する日本の法律事務所及びマレーシアの労働法学者にインタビューを行うなど、来年度以降の現地調査のための準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、国際労働法における規範の柔軟性研究の基礎を構築することを目的としたが、同目的はおおむね達成された。最初の課題であった先行研究の調査も問題なく終了した。また、エクス=マルセイユ大学の客員研究員として研究に従事したことで、規範の柔軟性研究の最新の動向を確認することができた。さらに、日本の法律事務所においてアジア法に携わる実務家及びASEAN地域の研究者との意見交換を通じて、次年度以降の規範の柔軟性の国内実施に関する研究の方向性を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果に基づき、今後は主に2つの視点から研究を行う。第1に、ILO諸条約における規範の柔軟性の発現形態の分析である。本年度確認したように、国際労働法における規範の柔軟性研究は2000年代初頭以降は停滞している。そこで、先行研究に依拠しつつ、現在のILO諸条約における規範の柔軟性を分析し、その類型化を試みる。この作業は文献調査及びインタビューに基づいて行う。第2に、ASEAN諸国における規範の柔軟性の国内実施の分析である。現在のところ、研究対象国としてはフィリピン、タイ、マレーシア、カンボジアなどを想定している。この国内実施の分析については、文献調査と現地調査を予定している。
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