2016 Fiscal Year Research-status Report

企業組織再編手続における労働者保護規範の解釈論・立法論的提案

Research Project

Project/Area Number	16K17000
Research Institution	Hirosaki University
Principal Investigator	成田史子弘前大学, 人文社会科学部, 講師 (90634717)
Project Period (FY)	2016-04-01 – 2019-03-31
Keywords	労働法 / ドイツ労働法 / 企業組織再編
Outline of Annual Research Achievements	本研究は、企業組織再編手続における労働者保護規範の解釈論・立法論を提案することを目的としている。企業組織再編のなかでも特に、事業譲渡及び会社分割の実施は、労働契約の帰趨や労働条件の変更等の労働関係に大きな影響を与えるものである。また、企業組織再編時の労働者の扱いは、その実施過程においても重大な位置づけを占める。そこで、本研究では、比較法的見地もふまえながら、日本法についての企業組織再編手続における労働者保護規範を分析し、解釈論・立法論両面から課題の解決に向けた試論を提示することを最終目的としている。以上の研究目的をふまえ、今年度は以下の研究を進めた。すなわち、日本法に関して、事業譲渡時の労働契約承継及び労働条件の不利益変更・整理解雇に関する学説・判例の分析を行った。また、会社分割についても、労働契約承継法制定の立法経緯、2005年会社法制定がもたらす影響、会社分割時の労働契約承継及び労働条件の不利益変更・整理解雇に関する学説・判例の分析を行った。以上をふまえ、企業組織再編という類似の事象である事業譲渡と会社分割とが、なぜ労働契約の承継などに関して異なるルールを設けているのか、経済的な見地も加えながら分析をし、労働者には具体的にどのような不利益が発生するのかを検討した。これらの研究成果は、研究論文や判例評釈として、一部公表している。また、次年度以降に計画していたドイツ法の検討についても、今年度、前倒しして文献調査を中心に進めた。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 今年度は、文献調査および各種研究会に出席することにより、本研究課題を遂行するために、基礎的準備に時間を割いた。東京大学・東北大学・北海道大学でそれぞれ行われた研究会に出席し、本研究課題に近接した分野を研究する研究者や実務家等の研究報告を受け、議論に参加し、また、自ら研究報告を行うことによって、有益な知己を得ることができた。また、本研究課題のドイツ法研究については、中央大学および労働政策研究・研修機構が主催する国際シンポジウムに出席することにより、有益な知己を得ることができた。
Strategy for Future Research Activity	今年度の研究成果をふまえ、今後は以下のことを中心に研究を進める予定である。すなわち、まず、日本法の研究にあたり、裁判例・判例の検討を深化させる予定である。これに関しては、東京大学および東北大学等の研究会において、研究報告を行うことが決まっている。また、ドイツ法の研究にあたり、必要な一次資料の調査および聞き取り調査として、ドイツへ赴く予定である。これらの研究をふまえ、最終年度の研究取りまとめにむけて、日本法およびドイツ法研究を深化させる予定である。