2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K17007
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
高橋 有紀 福島大学, 行政政策学類, 准教授 (00732471)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 更生保護 / 更生保護施設 / 地域社会 / 保護観察所 |
Outline of Annual Research Achievements |
・平成28年度は本研究初年度であるため、更生保護制度と地域社会の関係を取り巻く近時の国内の情勢に関する情報収集や資料収集を行うことに注力した。資料収集においては、犯罪歴以外の多様な事情を抱えた者が地域社会で生きていくことについても検討し、考察の視野を広げることを意識し、いわゆる「自殺希少地域」を扱った書籍や平成28年7月に発生した相模原障害者殺傷事件を扱った書籍、論文等、更生保護制度以外の分野に関する資料の収集にも努めた。また、聞取り調査においては、民間の更生保護施設である「プラザあすなろ」(青森県)、「恵辰会」(福岡県)、国立の更生保護施設である「北九州自立更生促進センター」(福岡県)にて、それぞれの施設と地域との関係、とりわけそれぞれの施設の移転や改築、新築時の地域社会の反応について調査を行った。 ・上記の文献調査、聞取り調査を通して、地域性や地域の成り立ちといった「地域」に固有な事情と、施設の成り立ちや移転・改築以前の施設と地域との関係といった「施設」にかかわる事情の双方を丁寧に検討することの重要性を認識するに至った。他方で、そうした各施設と周辺地域における特徴をそれぞれに検討するのみでは、研究が散漫になりかねないことは、計画段階から懸念していたことでもある。それゆえ、平成29年度以降は、文献調査、聞取り調査で得られた知見を基に普遍的な考察を導くことを意識して、更なる調査を進めるとともに、研究成果を随時、論文や学会発表の形で公表し、多くの研究者や実務家らと問題関心を共有したいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・資料収集においては、更生保護を扱った刑事政策関連の資料のみならず、元犯罪者の更生を扱った社会学関連の資料やいわゆる「自殺希少地域」に関する書籍など研究の視野の広がりに寄与し得る資料を多く収集することができた。また、平成28年度の研究計画に盛り込んでいた「プラザあすなろ」への聞取り調査を早期に実施できた点、本研究の背景の一つでもある「福島自立更生促進センター」とよく似た設立経緯や課題を抱える「北九州自立更生促進センター」への聞取り調査を実施できた点は、今後の研究の円滑な進行と研究内容の深化、広がりに積極的な意義を持つと言える。これらのことから、研究の進捗状況は当初の予定に照らして、おおむね順調に進展していると考える。 ・他方で平成28年度は、諸外国の状況に関する文献調査や現時点までの研究成果の公表については、時間の都合もあり十分に行うことができなかった。そのため、平成29年度以降は諸外国の状況に関する資料を意識的に収集し検討すること、学会での口頭発表や論文の投稿に積極的に取り組むことに留意したい。
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Strategy for Future Research Activity |
・上記の通り、平成29年度以降は諸外国の状況に関する資料の収集や研究成果の積極的な公表にも留意しつつ、平成28年度の文献調査、聞取り調査で得られた知見に関する更なる検討や考察を図るため引き続き、文献調査、聞取り調査を実施する。殊に、本研究の背景の一つでもある福島市の更生保護施設「至道会」に関しては、平成29年度中に移転が完了するため、その後の周辺住民との関係等について平成29年度中より調査を開始したい。また、平成28年度に聞取り調査を行った「北九州自立更生促進センター」では、「福島自立更生促進センター」との異同やその背景など、更なる考察の必要性を感じた。そのため、平成29年度以降、これら2つの自立更生促進センターの比較検討も視野に研究を展開したい。 ・諸外国の状況との関連では、平成29年度には9月に第3回世界保護観察会議(於 東京都品川区)での口頭発表を予定しているため、各国の参加者らと意見や情報の交換を図りたいと考える。また、それらを通じて、当初の研究計画通り平成30年度に諸外国での調査、資料収集を実施できるよう、平成29年度中より準備に着手する。 ・研究成果については、本研究最終年度である平成31年度中に書籍、論文等の形で公表することを予定している。そのため、平成29年度以降、随時研究の経過を学会報告や論文投稿の形で公表し、国内外の多くの研究者や実務家らからの批評や指摘を得たいと考える。
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Causes of Carryover |
平成29年9月に開催される第3回世界保護観察会議にて自由報告を予定しており、平成29年度には、それに伴う参加登録費、共同報告者らとの打合わせ、報告原稿(英文)のネイティブチェックなどへの出費が見込まれる。同会議への参加は、本研究の計画段階では予定していなかったものであり、平成29年度には当初の請求額に計上していなかった出費が予想されるため、平成28年度の交付額の一部を平成29年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年9月に第3回世界保護観察会議にて自由報告を予定しているため、その登録や準備にかかる経費として使用する。具体的な費目としては、「旅費」(共同報告者との打合せ)、「人件費・謝金」(報告原稿のネイティブチェック)および、「その他」(参加登録費、当日配布資料の印刷)を予定している。
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