2017 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおける条項規制法理の多元性に関する基礎的考察
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16K17015
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
酒巻 修也 青山学院大学, 法学部, 准教授 (80756338)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 条項規制 / 一部無効 / 濫用法理 / 書かれざるものとみなす / フランス民法 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、フランスにおいて条項規制を可能としている一部無効と書かれざるものとみなすというサンクションの比較と、一部無効と濫用法理による条項規制との比較を行った。 まず、一部無効と書かれざるものとみなすというサンクションとを分析した結果、一部無効が、通常、公序に関する規定の違反を理由に課されるのに対して、書かれざるものとみなすというサンクションは、ある条項につき実質的に合意しているとはいえない場合のほか、公序に関する規定の違反を理由に課される場合もあることがわかった。それゆえ、これらのサンクションが明確に区別されていない場面があった。その一方で、公序に関する規定の違反があるのではなく、ある条項につき実質的に合意しているとはいえない場合には、書かれざるものとみなすというサンクションの独自性を見出せた。 したがって、書かれざるものとみなすというサンクションの多義性を踏まえ、このサンクションが独自性を有する場面の射程を明らかにすることが、最終年度の課題として残された。 次に、一部無効と濫用法理による条項規制とを分析した結果、たしかに、両サンクションを同視して、これらをまとめて一部無効と捉え、一部無効が履行過程にも拡張して用いられているとする見解があった。しかし、この見解がもとにしている判例を子細に検討すると、その判例は、契約責任として損害賠償を認めているものであった。そのため、多くの学説が指摘するように、一部無効と濫用法理による条項規制とを区別し、後者を、契約の履行過程の事情を考慮して課されるサンクションと捉えるべきであると考えられた。 さらに、契約の履行過程の事情を考慮して条項を規制する手段として、誠実原則による条項規制もあった。これと濫用法理による条項規制とを比較した結果、両者には、合意内容をどのように確定するかの点で違いがあるものの、規制の対象は同じであると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、フランスで条項規制を可能とする三つのサンクション(一部無効、書かれざるものとみなすというサンクション、濫用法理による条項規制)の制度横断的な分析をほぼ完成させる予定であった。 このうち、一部無効と書かれざるものとみなすというサンクションとの相互関係、一部無効と濫用法理による条項規制との相互関係について、そして、課題研究を進めている過程で付け加えた濫用法理による条項規制と誠実原則による条項規制との相互関係についても、おおよその分析を行うことができた。 もっとも、書かれざるものとみなすというサンクションの独自性については、当該課題の応募後に、フランス民法の債権債務の分野の大きな改正がなされ、改正後の動向を注視しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、一部無効と濫用法理による条項規制との関係、および濫用法理による条項規制と誠実原則による条項規制との関係について分析結果を公表するために、それらをまとめる作業を行う。 次に、書かれざるものとみなすというサンクションの独自性については、最新の資料を収集しながら、また、実際にフランスにいき資料収集や聞き取り調査を行うことで明らかにし、その分析結果をまとめていきたい。 なお、一部無効と書かれざるものとみなすというサンクションとの関係については、既にその分析結果を公表した。
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Causes of Carryover |
当該年度に、フランスでの資料収集、実地調査を予定していたが、他の業務の都合で実施することができなかった。そのため、主に旅費として計上した予算が、次年度使用額として生じた。 生じた次年度使用額は、応募時の次年度の計画にはなかった、フランスでの資料収集、実地調査を行うために使用する予定である。
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Research Products
(2 results)