2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17016
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
濱口 弘太郎 北海道大学, 法学研究科, 助教 (50756319)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 損益相殺 / 遅延損害金 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
具体的内容 交付申請書記載のドイツの文献を精査するとともに、ドイツのフンボルト大学ベルリン及びルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンを訪問し、それぞれ、研究者と損益相殺に関して、意見聴取を行った。また、日本私法学会や日本交通法学会にも参加し、同時に、日本における学説及び実務の議論状況について、調査を行った。この調査の結果を踏まえて、「民事判例研究」(北大法学論集67巻5号328頁)を発表した。 意義及び重要性 交付申請書に記載の通り、損益相殺の母法は、ドイツ法である。ドイツでは、日本と異なり、損益相殺に関する議論が活発であり、判例の蓄積も、日本より相当進んでいる。そのため、ドイツにおける、研究者との意見聴取は、大いに有意義なものであった。この成果は、次年度以降の研究の基礎となるものであり、極めて重要性が高い。 また、上記の「民事判例研究」は、いわゆる過労死における、民事損害賠償と労災保険給付の調整が問題となった最高裁判所大法廷平成27年3月4日判決民集69巻2号178頁に関するものである。この事件では、遅延損害金(債務者が、適時に、金銭債務を履行しないため、それによって、債権者に生じる損害をいう。)と、労災保険給付との調整が問題となった。従前、この問題について、最高裁判所は、労災保険給付を、まず遅延損害金に充当する旨の判決を下した。しかし、平成27年3月4日、最高裁判所は、従来の判断を覆し、遅延損害金と労災保険給付は調整されず、また、労災保険給付との間で損益相殺的な調整を行うべき損害との関係では、特段の事情がない限り、「損害は現実にはない」ものと評価すべき旨を判示した。これは、損益相殺と損害との関係を言及したものであり、損益相殺の議論をする上でも、特に注意する必要がある。その意味で、上記拙稿「民事判例研究」は、本研究の遂行に当たり、重大な意義を有する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツの文献の精査やドイツにおける研究者からの意見聴取が順調に行われたため。反面、判例研究との関係で、日本法の研究に予定より時間と労力を割いたため、ドイツ法に関する研究は、当初の予定よりは遅れており、次年度以降も実施する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね交付申請書記載の通り。ただし、今年度において、ドイツ法の研究が当初の予定より遅延しているため、来年度以降の、ドイツ法研究の比重は、交付申請書の記載よりも高まる見込みである。
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Causes of Carryover |
経費の効率化を推進した結果、約2.2%の剰余が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
剰余金は、誤差の範囲内であり、次年度の助成金と合わせて、次年度の研究のために支出する。
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