2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K17016
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Research Institution | Nagoya Keizai University |
Principal Investigator |
濱口 弘太郎 名古屋経済大学, 法学部, 准教授 (50756319)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 損益相殺 / 障害年金 / 厚生年金保険法 / 支分権 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年4月5日付け小職提出にかかる平成28年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書の平成29年度の研究実施権計画欄記載の通り、研究の重点を日本法に移した。 そして、同欄記載の通り、損益相殺の効果を明らかにするためには、損害賠償法のみならず、関連する法分野についても知見を深める必要がある。そこで、小職は、障害年金に関する、最判平成29年10月17日民集71巻8号1501頁の判例研究を行い、名経法学40号に公表した。 この判決は、公法に関するものであるが、実質的には、時効起算点が問題となっている。そのため、いわば公法の中に存在する私法が問題となった局面であるということができる。この異なる法規範の調整こそが、損益相殺の中心課題である。即ち、損益相殺が問題となる局面は、常に、何らかの法規範によって、被害者に利益を与えることが指示されている。一方で、損害賠償法規範は、被害者の利得禁止を指示しているとされる。2つの法規範が異なる指示を行っている場合、規範の劣後が問題となろう。 もっとも、そもそも、損害賠償法規範が、全面的な利得禁止を命じているかは疑義が損する。全面的な利得禁止は、ドイツ法におけるDifferenztheorieにおいて提唱されたドグマであり、現在でも、ドイツ法の通説とはいうものの、損益相殺に関する学説はこれに従っておらず、大いに疑問がある。 損害賠償法が、利得禁止ではなく、損害の回復を命じているとすれば、法規範の調整も、そこまで深刻なものではないであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
該当年度の初めに、所属研究機関を変更し、研究環境が劇的に変化した。そのため、該当年度の前半は、研究の遅延が生じた。しかしながら、まずは可能なことから実施するべきとの方針に基づき、【研究実績の概要】記載の通り、研究を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年4月5日付け小職提出にかかる平成28年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)交付申請書の記載に従い、研究を進める。
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Causes of Carryover |
予算執行上の誤差である。 翌年度分の助成金と合わせて、翌年度の研究目的のために使用する。
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