2018 Fiscal Year Annual Research Report
Result of benefit-loss rule by comparison of Japan and Germany
Project/Area Number |
16K17016
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Research Institution | Nagoya Keizai University |
Principal Investigator |
濱口 弘太郎 名古屋経済大学, 法学部, 准教授 (50756319)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 損害賠償 / 損益相殺 / 差額説 / 遅延利息 |
Outline of Annual Research Achievements |
比較法研究により、ドイツ法においては、損益相殺(Vorteilsasugleichungあるいはcompensatio lucri cum damno)は、損害論の一部として議論されていることが確認できた。すなわち、ドイツ法において通説とされるDifferenztheorieにおいては、損益相殺はその根拠の一つとされたという歴史的経緯がある。その根拠とされたローマ法の法文が、今日の損益相殺の議論において適切であるかは疑問があるものの、その経緯を考えれば、損益相殺は、Differenztheorieの論理的帰結であるということができるのである(なお、我が国でも、損益相殺は差額説の論理的帰結であると説かれることもあるが、我が国の「差額説」の内容に疑問があり、にわかに賛成することはできない。)。 損益相殺の効果として、遅延利息の取り扱いが問題となっているが、損益相殺を損害論において議論する以上は、遅延利息は生じないものと考えるのが自然である。この問題は、我が国の法学において損益相殺の位置づけを曖昧にしてきた帰結であると考えられよう。 損益相殺を効果から検討すると、我が国の議論は、弁済の問題と損害額の算定の問題を峻別することなく、損益相殺の名の下で議論してきたことが分かる。自賠責や任意保険などの責任保険と社会保険ではその性質が異なると考えざるを得ず、今後はこの点に注意した議論が必要となろう。もっとも、社会保険と一口に言っても、災害補償を肩代わりする労働者災害補償保険のような制度もあり、さらに検討が必要になろう。
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