2016 Fiscal Year Research-status Report
面会交流における「子の福祉・利益」基準―ステップ・ファミリーを中心に
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16K17017
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
ROOTS MAIA 東北大学, 法学研究科, 助教 (20754550)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 面会交流 / ステップ・ファミリー / 子の福祉 |
Outline of Annual Research Achievements |
父母の別居・離婚後の別居親と子どもとの面会交流について定める際に判断基準となっている「子の福祉」或は「子の最善の利益」の具体的内容について、学説上の議論に加えて、「子の福祉」が個別事案で、裁判例においてどのように具体化されているかについての研究を進めた。具体的な場面として、ステップ・ファミリー(再婚家庭)の子とその別居実親との面会交流という場面に着目した。家事事件における「子の福祉」概念(個別のケースにおけるその子の福祉の具体的内容を含む)につき、学説上従来から活発に議論され、裁判例も多いドイツを比較対象とし、ドイツでの議論及び裁判例の研究・検討を進めた。以上の研究の成果の一部は、「父母の別居・離婚後の親子関係―面会交流における「子の利益」を中心に(1)」法学80巻5号60-85頁(2016年12月)において公表した。 次には、日本のステップ・ファミリーにおける面会交流(面会交流が実施されているか、されていない場合、なぜそうなのかなど)をより理解すべく、日本で家族社会学や心理学等の分野でこれまで行われてきたステップ・ファミリーをめぐる研究成果を、法の観点から検討した。また、それらの研究で明らかになってきた日本のステップ・ファミリーの(法的)ニーズ及び法制度の不備(養子縁組をめぐる法等)につき、研究・検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツ法における、別居親と子どもとの面会交流が原則として子の福祉に適うという基本的スタンス(ドイツ民法典1626条3項1文)の条文化の背景(児童心理学等の法以外の分野での研究の展開やそれらの研究成果が法律家によりどのように理解され、法の中に取り入れられたかを含め)と近年の議論の展開に関する研究を行い、日本法への示唆を得ることができた。また、より一般的に、ドイツでの法的概念としての「子の福祉」をめぐる学説上の議論や裁判例での実際の適用(ステップ・ファミリーにおける面会交流に着目して)に関する研究を行った。 本研究の一部として予定していた、ステップ・ファミリーのサポート団体及び当事者団体等へのインタービュー調査の下準備(当該団体が行った調査の内容の確認、及びステップ・ファミリーのメンバーを対象とした、家族社会学者等による実態調査の成果の確認及び法的観点からの検討をほぼ終えた。
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Strategy for Future Research Activity |
作業が少し遅れている、ステップ・ファミリーの当事者団体及びサポート団体へのインタービュー調査を積極的に進めていきたい。本来の研究計画で予定していた、Stanford大学の若手研究者カンファレンス(平成29年5月開催)への参加を断念し、本研究の趣旨により近いテーマに着目する、平成29年7月25日から29日までアムステルダムにて開催されるInternational Society of Family Lawのカンファレンスで、日本のステップ・ファミリーをめぐる法及び日本社会におけるステップ・ファミリーの(法的)ニーズにつき、報告することにした(報告決定)。それまでに、インタービュー調査の実施を終わらせ、その成果をカンファレンス報告の際にまとめたい。 これまでメインで行ってきたドイツ法の研究をまとめる段階にきているため、平成29年度には、相対的に研究が進んでいないイギリス法の研究に本格的にかかる。
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Causes of Carryover |
本研究の一部として予定していたインタービュー調査を実施する。平成27年度にインタービューの下準備を行い、実際のインタービューの実施する予定であったが、平成28年度には下準備のみを行い、インタービューの実施の開始が、平成29年度になったため、その分の旅費が、平成28年度に発生していない。 平成28年度においては主にドイツ法の研究を行い、イギリス法の文献研究を平成29年度に行うことになったため、イギリス法に関する書籍の購入等が、主に平成29年度で行うことになる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
おおよその計画: イギリス法に関する文献(法学、社会学、心理学の書籍)の購入(25冊×10000円) インタービュー調査のための旅費(国内出張:東京(3回×3万円)、大阪・京都(3回×6万円)、等)
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