2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K17018
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿部 裕介 東北大学, 法学研究科, 准教授 (20507800)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 所有権 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書記載の研究目的及び研究計画に記載したとおり、所有権に基づく物権的返還請求についてフランス法との比較を行うため、平成28年4月は、パリ第1大学の客員研究員としてフランス企業倒産法・民事執行法などの講義を聴講し、前提知識の獲得に努めた。前者においては、企業倒産法上の所有者の取戻訴権に関する近時の法発展及び判例・学説の蓄積について知識を獲得し、後者においては、民事訴訟手続において物権的請求権を機能的に代替する差押解放訴訟(action en distraction)に関する知識を獲得した他、債権の保全差押えの効力に関して企業倒産法上の銀行口座の取戻訴権に関する議論と連続した議論が存在することを知ることができた。 文献の読解については、研究実施計画記載のLarocheの著作の読解分析を進める過程で、倒産以外の平時の取戻訴権の位置づけを再検討する必要を感じた。そのため、所有権の効力を「現物制裁(sanction en nature)」の観点から分析したフランス民法学の著作を読解の対象に追加し、在外研究中にその読解を進めた。 8月末に在外研究を終えて帰国した後、11月には、東北法学会2016年度大会でそれまでの研究の成果を口頭発表した。 さらに、研究の過程で、フランス法学において相続回復訴権を特殊な客体に対する取戻訴権として位置づける学説が存在することに気づき、相続回復請求権と所有権に基づく物権的請求権との関係について関心を持つに至った。そのため、共同相続人が遺産全体に対して有する権利について、まずは日本法の現状を分析することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Larocheの著作の読解・分析は結果として中途段階に留まってしまっており、倒産法上の取戻訴権に関する研究は当初の予定よりも遅れてしまっている。しかしながら、「現物制裁」としての所有権の効力を分析したフランス法学説や、相続回復訴権に関する学説など、研究の対象が当初の想定を超えた拡がりを持ちつつあり、研究成果の中間発表も実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究の過程で拡大した研究対象について、研究計画に取り込んで本格的に研究を進め、断片的にでも研究成果を公表していく予定である。
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Causes of Carryover |
もともと当初予定していた以上に支出があったので、10月に60万円の前倒し支払い請求を行ったが、年度内にそのすべてを使用せずに済んだため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は前倒し請求によって圧縮されていた分の一部であるので、当初の予定通り使用する予定である。
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