2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K17018
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿部 裕介 東北大学, 法学研究科, 准教授 (20507800)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 所有権 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、フランス法学の物権の体系における所有権の位置づけについて、所有者の取戻訴権(action en revendication)を素材として、とりわけ取戻訴権を「現物制裁(sanction en nature)」の一つとして位置づける学説をも視野に入れて研究を行った。平成29年7月には、物権法改正研究会にゲストとして招かれ、所有者の取戻訴権をめぐる現代フランス法学の展開についての口頭発表を行った。これにより、現代フランス法学において、所有権を物の直接支配権として捉える理解か否かによって、所有権の効力における所有者の取戻訴権の位置づけに偏差があり、所有権を物の直接支配権として捉える理解と所有者の取戻訴権との間に緊張関係が存在することを明らかにした。 これと並行して、昨年度の研究過程で相続回復請求権と所有権に基づく物権的請求権との関係を研究対象に追加したので、この研究を進めた。相続回復請求権は相続人の地位をめぐる紛争を解決するためのものであるが、相続人の地位は遺産全体に対する相続人の権利と表裏の関係にある。相続回復請求権に関する研究の前提として、遺産共有状態における共同相続人の権利について、フランス法・ドイツ法との比較を行いつつ日本法の現状に関する研究を行い、平成29年4月には東北大学民法研究会で共同相続における遺産共有一般について口頭報告を行った。さらに、平成29年8月には有斐閣若手研究者懇親会で共同相続人の具体的相続分について口頭発表を行い、平成29年10月には具体的相続分に関する研究成果を法律時報で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の一部について、当初の研究計画では予定していなかった報告・公表まで行うことができた。 他方で、当初の研究計画においては、平成29年度中に日仏法学会で報告を行うこととしていたが、学会側から平成30年度での報告を依頼されたため、平成30年度に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
所有権に基づく物権的返還請求権そのものの研究については、平成30年度中に予定されている日仏法学会での報告を目標に、引き続き研究を継続していく予定である。これに加えて、相続分に関して今年度実践した研究を発展させて、相続回復請求権に関する研究につなげていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究計画においては平成29年度にフランスでの資料調査のための外国旅費を計上していたが、多忙のため延期した。延期した海外出張を行うことで使用したい。
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