2018 Fiscal Year Research-status Report
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16K17018
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿部 裕介 東北大学, 法学研究科, 准教授 (20507800)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 所有権 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、フランス法学の物権の体系における所有権の位置づけを明らかにするため、日本法の物権的返還請求権の対応物である所有者の取戻訴権(action en revendication)を素材として、研究を行った。 前年度までは、現代フランス法学を中心として研究を行なっていたが、その過程で、現代フランス法における取戻訴権について、日本法上の物権的返還請求権にはない特徴を検出した。そうした特徴が何に由来するものであるのかを探求するため、今年度は、主にフランス民法典制定前のフランス古法の学説を検討の対象とした。そして、フランス古法では動産の取戻しと不動産の取戻し(本権訴訟)とで大きく状況が異なることを明らかにし、にも関わらず学説において不動産の取戻しを中心とした取戻しの統合的把握が始まっていたために、不動産の取戻しの特徴が現代フランス法学にも強く影響したのではないか、他方で動産取戻しは現代フランス法における倒産法上の取戻しと系譜関係にあるのではないか、という仮説を立てるに至った。 平成31年2月には、こうして得られた研究成果に基づき、日仏法学会で研究報告を行った。 他方で、前年度までの研究によって、相続回復請求権と物権的請求権の関係が研究対象に追加されていたが、これについては、フランス古法のPothierの所有権に関する概説書に、取戻訴権と並列させる形で相続回復訴権の叙述が存在することを確認した。また、フランス古法における不動産の取戻しの特徴が相続回復訴権にも検出できるのではないかという仮説を立てるに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画において平成29年度中に実施することを予定していた研究報告を、1年度遅れではあるものの、実施することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を実施する過程で派生し、今年度展開する予定であった相続回復請求権の研究については、いまだフランス古法の研究に着手した段階に留まっているので、引き続きこれを遂行して、相続回復訴権と不動産取戻しの類似性に関する仮説を検証し、研究成果の公表につなげる予定である。 取戻訴権については、現代の研究と古法の研究に一応の目処が立ったので、その中間にあるフランス民法典の起草過程や19世紀・20世紀前半の学説に軸足を移して研究を進め、研究成果の公表につなげる予定である。なお、研究実施計画上は東北大学の紀要である法学での研究成果の公表を予定していたが、東京大学への移籍に伴い、研究成果の一部を東京大学の紀要である法学協会雑誌で公表することに変更することを計画している。
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Causes of Carryover |
平成31年度から東京大学に移籍することとなり、これに伴う引越し作業との兼ね合いで海外出張を含む出張を見送らざるを得なくなった。また、書籍等の物品についても移籍後に購入することとしたものがあるため、次年度使用額が生じた。これについては、購入を見送っていたものを次年度に購入し、また海外出張等の出張を次年度に実施することで使用する予定である。
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Research Products
(1 results)