2017 Fiscal Year Research-status Report
双務契約における牽連性概念の再検討-フランス法における同時履行の抗弁を中心に-
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16K17020
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩川 隆嗣 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (20707781)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 民法 / 契約法 / フランス法 / 牽連性 / 双務契約 / 同時履行 / 相殺 / 留置権 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、双務契約の牽連性を巡る議論を、主としてフランス法を中心として検討した。 今年度は、まず、総論的な検討のまとめとして、カサン・カピタン以降、現在に至るまでのフランス法学説の展開を検討した。その結果、両者の見解は現在のフランス法学説に共に有力説として受容されていること、カサンの広範な法的牽連性という理解が論文レベルでは通説を形成していることを確認できた。また、法的牽連性は、論者によって表現が様々であるものの、債務間の関係ではなく債務不履行が債務の発生原因たる法律関係に与える影響に着目するものであって、債務の発生原因たる法律関係における予定と実際の債務の履行状況とを対比して、法律関係において予定されていなかった一方当事者の債務が履行されないままの他方当事者への履行の義務付けは、法律関係における予定と齟齬を生じさせるので、それを履行拒絶または相殺という同時履行によって是正し、または契約の解消によって解消することを、広範な牽連性の根拠としているとの分析を行うことができた。 次いで、各論的な検討として、同時履行の抗弁と、留置権、牽連する債務間の相殺、法定解除の関係という、具体的な諸制度に着目した検討を進めた。その結果、例えば、同時履行の抗弁と留置権の関係については明文規定が創設されたにもかかわらず解釈上なお不透明であること、牽連する債務間の相殺は同時履行の抗弁を根拠とするかつての判例・通説が批判され、法的牽連性が根拠であると解されるようになったことなどを明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の計画通り、牽連性の総論的な考察から、具体的な諸制度という各論的な考察へと検討を進めることができたため。また、本研究に関する論文の雑誌連載を開始することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは今年度と同様、牽連性に基づく具体的な諸制度の考察を進めていく。最終的にはフランス法を総括して、それを分析軸として日本法の分析を行う。また、来年度には、本研究に関する学会報告を行った後、雑誌連載を完結させる予定である。
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Causes of Carryover |
書籍の購入費用に余剰が生じたこと、旅費として殆ど使用する機会が無かったことが理由である。 翌年度分の書籍の購入費と旅費に充てる予定である。
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