2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K17025
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐野 智也 名古屋大学, 法学研究科, 特任講師 (30419428)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 民法の立法沿革 / 19世紀ヨーロッパ法 / 外国法の翻訳 / 江戸以前の法 / ネットワーク分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本民法典は、旧民法を基礎として、国内外の情報を参照して起草されている。このうち、日本国内の法令、伺・指令といった行政文書、養老律令や『続日本紀』といった旧慣、に関する資料の収集と整備をおこなった。 法律レベルの参照として、明治19年公文式以前の布告32本、法律14本、勅令5本、法律案1本が使われていることがわかった。このうち、最も多く参照されているのは商法であり、144ヵ条で参照されている。次に多い民事訴訟法は20ヵ条に過ぎず、商法の参照が目立つ結果となった。 判例は、56種類が参照されており、大審院判決だけではなく、横浜始審裁判所判決2件、東京控訴院判決1件も参照されている。 達・省令・訓令は23本が参照されている。それ以下の行政文書は、887種類の表記で参照されている。その内訳を概観すると、内務省指令が357種類と最も多く、司法省指令が349種類、太政官指令が75種類と続く。これらのほとんどは、国立国会図書館の日本法令索引で見つけることができず、内容の確認が困難である。そのため、表記は異なるが内容が同じものを含んでいる可能性があり、上記の数値は若干の誤差を含んでいることに留意が必要である。さらに、下位の部局も見られ、戸籍局照会、法制局回答、民事局次長回答、といったものも見られる。 旧慣や文献等については、多種多様な表記が登場するため、種類として簡単に分類することができないが、家族法の分野でのみ参照されているという特徴がある。 上記のような基礎データを整備する一方で、外国法を継受する過程での翻訳分析のための調査をおこなった。この点、日本語学の研究者と意見交換する機会を持つことができた。明治期の法律用語を研究対象とする日本語学の研究者は、ほとんどいないため、貴重な機会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に予定していた国内法・旧慣に関する資料の収集と整備については、順調に終了した。法律レベルについては、テキストデータも入手することができた。ただし、行政文書については、大規模なコレクションである「日本法令索引〔明治前期編〕」でも発見できないものが大部分であり、また現存していない可能性も高いことがわかったため、その内容の収集はしないこととした。 計画では、参照外国法の対訳資料の整備も初年度におこなう予定であったが、国内法・旧慣に関する資料の収集と整備が順調に進んだため、次年度に予定していたデータベースの構築を先におこなった。参照外国法の対訳資料の整備が未着手であるが、データベース構築を前倒しており、全体としてはおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
参照外国法の対訳資料の整備と、対訳の分析を進める。外国語のテキストデータはほぼそろっている状態であり、和訳資料についてテキストデータを作成する。具体的には、イタリア民法とドイツ民法の和訳資料のテキストデータを作成することを考えているが、必要に応じて、データを追加する予定である。テキストデータを作成した上で、コンピュータで処理するために、XMLによる構造化をおこなう。その上で、ワードアライメントという手法を補助的に用いながら、対訳語の分析をおこなう予定である。
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Causes of Carryover |
テキストデータ作成やシステム開発を効率的におこない、当初の予定よりも低額で、予定していたツールを作成することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定よりもテキストデータの作成の範囲を拡大する。
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Research Products
(3 results)