2017 Fiscal Year Research-status Report
会社法における第三者保護制度の再検討――会社役員の対第三者責任制度を中心に
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16K17026
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 陽一 京都大学, 法学研究科, 准教授 (10737399)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 会社法 / 対第三者責任 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績の概要は、次の3点にまとめることができる。 第1に、会社役員の対第三者責任に関する近年の裁判例および学説の動向を調査し、整理・考察した。近年においては、同責任が様々な場面で問題となっていること、とりわけ会社役員の内部統制システム構築義務や監視義務と関連付けて問題となっていることが改めて明らかとなった。また、金融商品取引法上の会社役員の責任においても、こうした義務が問題となることが少なくないことも明らかとなった。 第2に、現在進行中の会社法改正作業において主たる改正項目のひとつとされている会社補償制度について、アメリカ法(法律・判例・学説)の状況を調査し、考察した。今後は、当該考察をふまえて、引き続き法制審議会での議論をフォローしながら、今回の会社法改正において、会社補償制度がどのような形で条文化され、どのような解釈上の問題が生じるのか、そしてそれにどう対処すべきかを検討したい。 第3に、オリンパス株主代表訴訟事件東京地裁判決について、判例解説を執筆する機会を得たので、同事件の経緯について調査し、判決内容を分析・検討した。同事件は会社役員の対会社責任に関するものではあるが、任務懈怠の内容やその判断方法、損害論(課徴金を損害賠償額に含めることの可否)、過失相殺などによる責任限定の可否など、対第三者責任においても参考となる点が数多く含まれており、本研究を進める上でも非常に有益であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も、前述のとおり、研究計画に比して相当程度の研究をおこなうことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、会社法429条の解釈のあり方および会社補償制度・D&O保険制度について、他の会社法研究者や会社法に精通した実務家と議論をし、その成果を公表する機会(公表は平成31年度となる予定である)を得たので、それに向けて準備を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
残額以下で必要な書籍等がなかったため、次年度使用額とした。ごくわずかな金額であり、書籍の購入等により使用する予定である。
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