2017 Fiscal Year Annual Research Report
Economic Analysis of Form Contract
Project/Area Number |
16K17028
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西内 康人 京都大学, 法学研究科, 准教授 (40437182)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 経済分析 / 約款 / 定型約款 / 不当条項 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、最判平成13年3月27日民集55巻2号434頁(以下、平成13年判決)を題材に、約款規制一般に関して経済学上把握される利益が持つ意味の明確化を行った。すなわち、要件としての具体的事実と、それと結びつく価値を分解して考察する枠組みを、本報告では提示した。 つまり、まず、要件として当てはめ可能な事実を、次の三つに分解した。すなわち、①「手続的自治」(個別交渉の有無(約款であれば、個別交渉を欠いているという意味で問題))、②「実体的自治」(情報非対称の問題(約款利用の相手方は約款内容を知らないことが問題)と、情報処理や判断能力の不十分さの問題(約款利用の相手方は、約款の内容等について十分に理解できず、あるいは、理解が十分でも不適切な判断へと向かってしまうことが問題))、③「多様性」(更に二分され、第一に契約内容の「多様性」(契約内容につき多様なものから選び取れるような状況が、約款利用の相手方にはないことが問題)と、第二に相手方選択の「多様性」(契約相手方を選択できる状況が、約款利用の相手方にはないことが問題))という形で、要件面の分解を行った。 次に、このような要件がどのような価値と結びつきうるのか考察した。その結果、価値としての自由はどのような要件とも結びつき得る一方で、価値としての厚生は「実体的自治」としか結びつかないことを明らかにした。 その上で、我が国の約款規制のあり方として、次の2点を提案した。すなわち、第一に、自由としか結びつかない「手続的自治」や「多様性」を重視したものとなることは平成13年判決と不整合であり、組み入れるべきでない。第二に、厚生をも組み入れた形で「実体的自治」を中心として問題を分析すべきである。
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