2017 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative study on the interplay of the law of obligations and property law in the context of trust
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16K17029
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
コツィオール ガブリエーレ 京都大学, 法学研究科, 准教授 (10725302)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 信託 / 物権と債権の関係 / 価値追跡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、信託に関係する者それぞれの利益の具体的内実およびそれらの最適な調整のあり方を明らかにし、さらには物権法・債権法二分論の再考の手がかりとするため、いわゆる価値追跡理論を分析し、その信託にとっての意義および限界を明らかにした。 価値追跡とは、原権利者の権利に由来する価値が返還義務者の下に同一性を識別できる形で存在する場合、原権利者は優先的権利を有するという考え方である。これは、原権利者が権利の価値の喪失というリスクを自発的に負担したとは言えず、したがってその権利についての要保護性が認められることを前提に、返還義務倒産により権利者の要保護性が特に高いこと、その価値が返還義務者の責任財産中に現存していること、当該価値が責任財産に属しないことが明白であること、といった第三者の利益との衡量を経て正当化される。 価値追跡と信託は、物権法上の帰属割当と異なる権利の割当を認める点において共通の発想に出るものである。したがって、価値追跡をめぐる議論から、信託における利益衡量においていかなる要素を考慮すべきかとか、第三者保護のためにいかなる公示のための要件が求められるかといった点に関する手がかりが得られる。もっとも、価値追跡においては原権利者に優先的権利が認められるにとどまるところ、信託においては責任財産の分離という、それを上回る効果が認められるところ、その理論的根拠についてはなお検討する必要がある。
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