2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17033
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
伊藤 栄寿 上智大学, 法学部, 教授 (30454317)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 空き家問題 / マンションの解消 / 所有権の消滅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、防災・衛生・治安などの観点から、周囲に危険を及ぼしうる状態となっている老朽化建物の取り壊しを私法上正当化するため、所有権の消滅を認める理論およびその基準を明らかにすることを目的とする。平成28年度は、3カ年計画の2年目にあたり、第2段階として、空き家を取り壊すことの正当化根拠、および、マンション解消制度の正当化根拠について探ることとした。 第1に、空き家問題について、弁護士会主催のシンポジウムでの講演、パネルディスカッションを行った。空き家対策特措法は、義務の主体、措置の対象、措置の内容について問題があることを明らかにした。そのうえで、私法上の手当をするために、対象を建物に限らず建物内部の動産にも及ぼすべきこと、所有者不明の問題も意識して土地建物について所有者に適切な管理義務を負わせるべきことなどを明らかにした。 第2に、マンション解消制度について、同じく、所有権の消滅という結論をもたらす建替え制度を参考に、検討を行った。その結果、客観的要件を設定することが必要であることが明らかになった。 第3に、ドイツでの調査を行った。ドイツでは日本と異なり、空き家問題が大きくクローズアップされているわけではないが、都市によっては、空き家問題が存在している。しかし、基本的に建物は石造りであり、建物が老朽化し取り壊しが必要という場面は多くない。すなわち、建物の取り壊しということが大きな問題となっているわけではない。むしろ問題となるのは、建物の管理、活用である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目にある平成29年度は、(1)空き家を取り壊すことの私法上の正当化根拠についての分析・報告、費用負担の問題、(2)マンション解消制度の正当化根拠、(3)ドイツにおける空き家問題、マンション問題、そしてその理論状況についての調査、以上の3点を目的としていた。 (1)については、弁護士・実務家(行政担当者)と議論をすることができ、特に費用負担の問題についての問題状況を把握できた。 (2)については、マンション解消制度を提示するための基礎資料を集め、一定の方向性を得ることができた。 (3)については、ドイツでの調査により、問題状況を把握することができた。 当初の目的としていた以上の3点を達成することができたため、研究は「おおむね順調に進展している」といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は最終年度にあたるので、(1)空き家取り壊しの正当化根拠を示し、(2)マンション解消制度の立法提案をし、(3)所有権消滅の根拠および基準を明らかにすることによって、研究全体のまとめを行う。 (1)については、すでに弁護士等の実務家との議論も行っており、論文という形で公表することを目指す。(2)についても、研究会等での最終議論を経た上で、論文という形での公表を目指す。(3)については、(1)(2)の結論を得たうえで、研究会等での報告をしその理論構築を目指す。
|