2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K17034
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
羽生 香織 上智大学, 法学部, 教授 (30547279)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 嫡出推定 / 婚姻 / 出生 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、出生による親子関係の推定について検討した。嫡出推定の意義を検討するに際しては、父子関係の成立の場面のみならず否認の場面を含めた理解が重要となる。さらに、戸籍の届出と関連して、戸籍の届出から記載までの流れ、届出当事者の「父」または「母」としての意思または意識、その後の裁判手続についても範囲を広げて検討しなければならない。また、父子関係の成否を検討するに際しては、DNA鑑定により遺伝学上の親子関係の存否を解明できるようになった現代においてもなお、子の身分関係の法的安定性の要請に最大限配慮する必要がある。 嫡出推定の「推定」の意味について、事実上の推定よりも強力な推定であると解されている。つまり、嫡出推定に関する民法772条の規定は、1項において父性推定、2項において懐胎時期の推定を定めている。同条2項の懐胎時期の推定について、反対の事実を証明すれば、推定を覆すことが可能である。比して、同条1項の父性推定について、反対の事実(父子間の生物学上の親子関係の不存在)を証明しても、推定を覆すことは当然には認められていない。それゆえに、単なる推定よりも強力な推定であることが分かる。父子間の生物学上の親子関係を否定する明確な証拠があるにもかかわらず、当該父子間の法律上の親子関係を否定することができない場合がある。 嫡出推定が強力な推定であるとは、婚姻をどのように捉えるかという視点ともかかわる。婚姻には、夫が妻の産んだ子を自分の子として無条件に受け入れるという夫の意思が含まれているとの視点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、収集した欧文資料の読み込みに多くの時間を費やした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、フランスの伝統的婚姻観において論じられていた、婚姻の際に出生子を自己の子として受け入れるという夫の意思を、現代的婚姻観においてどのように評価するかを検討したい。
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Causes of Carryover |
今年度の研究内容と次年度の方向性を再確認した上で、補足が必要な部分について資料収集を行い、整理・分析する。
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Research Products
(7 results)