2018 Fiscal Year Research-status Report
発行会社の不実開示の抑止のための法的エンフォースメントの総合的研究
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16K17037
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Research Institution | Seinan Gakuin University |
Principal Investigator |
藤林 大地 西南学院大学, 法学部, 准教授 (80631902)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 虚偽記載 / 有価証券 / 情報開示 / 民事責任 / 粉飾決算 / 相当な注意 / 元引受証券会社 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、役員および監査法人などのゲートキーパーに責任を課すことの意義と限界、各種の主体間での役割分担の在り方、責任の要件の在り方について検討を行った。 具体的には、第一に、FOI事件に関する裁判例を素材として、元引受証券会社の「相当な注意」の内容について検討を行った。元引受証券会社は、証券市場のゲートキーパーと位置づけられる重要な主体ではあるが、引受審査等において具体的にどのような注意を払うべきかが争われた事案はなかった。この点で、FOI事件は重要なサンプルを提供するものとなっている。研究においては、判決が指摘する元引受証券会社と監査法人の役割分担およびその内容は合理的なものであり、結論として元引受証券会社の損害賠償責任を否定した点も支持できると考えられることを指摘した。 第二に、取締役などの役員等の「相当な注意」の意義について検討を行った。取締役らは、有価証券報告書等を作成する立場にあるものであり、虚偽記載等の発生を防止するために役割を果たすことが期待されるが、他方で、要求される注意の水準を高く設定すれば、取締役への就任の忌避や過剰な注意などの問題も生じる。そのため、「相当な注意」の意義については、取締役の善管注意義務に関する議論の発展を踏まえた検討を行うことが必要となる。そこで、内部統制システムの整備や信頼の原則に関する議論について整理を行い、それをもとに「相当な注意」の意義について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、D&O保険の意義に関する検討を行うことを予定していたが、D&O保険は民事責任制度を前提としたものであるところ、同制度自体の検討が不十分であると考え、研究計画を変更した。 研究の成果としては、①元引受証券会社の「相当な注意」の意義については判例研究として成果を公表を行うことができた。また、②役員等の「相当な注意」の意義については、研究成果を今年度中に公刊する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、役員等の「相当な注意」の意義について研究を行う。また、不実開示の抑止における私的・公的エンフォースメントの協働のあり方について研究を行う。
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Causes of Carryover |
書籍購入の際の残額として次年度使用額が生じた。書籍の購入費用にあてることを計画している。
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