2018 Fiscal Year Research-status Report
ビッグデータ時代における表現の自由とプライバシーに関する日米欧比較法研究
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16K17038
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
成原 慧 九州大学, 法学研究院, 准教授 (40647715)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 表現の自由 / プライバシー / 通信の秘密 / ビッグデータ / パーソナルデータ / ブロッキング / フェイクニュース / AI |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ビッグデータ時代における表現の自由とプライバシーの間の緊張および連関の構造を明らかにした上で、関連する他の権利・利益にも配慮しつつ、表現の自由とプライバシーの価値を調整・統合し、両者を実効的に保障するための制度設計の枠組みと指針原理を提示することである。本年度は、研究計画を踏まえ、以下の成果を得た。 (1)海賊版サイトのブロッキングが通信の秘密等との関係で有する問題について検討し、論文を公表した。その結果、今日において日本法の通信の秘密は、通信の内容のみならずメタデータも保護することにより、インターネット利用者のプライバシーを広く保護するとともに、政府や媒介者による通信の遮断に厳格な制限を課すことにより、インターネットを利用した表現の自由の保障を裏付ける機能を有していることを明らかにした。 (2)フェイクニュースに関する法的問題について比較法的な検討を行い、論文を公表した。その結果、今日ではパーソナルデータに基づくターゲティング広告等を利用して国民の投票行動の誘導が試みられているようになっているが、かかる手法による民主政治のプロセスの操作に対抗する上では、ネット利用者のプライバシーの保護が有効な場面があることを明らかにするなどして、プライバシーが、表現の自由と同様に、民主主義のプロセスを維持・促進するという公共的な価値を有していることを示した。 (3)AIの発展に伴う個人の地位と権利の変容の可能性について検討を行い、関連する書籍等を執筆した。その結果、AI等の発展に伴い、近代法の主体とされてきた個人の地位が動揺し、主体と客体が相対化する可能性を指摘した上で、個人が必要に応じAI等に権限を委任しつつ、AIとその学習に用いられるデータをコントロールする権利を留保することが、ビッグデータ時代において個人の主体性を維持・促進するために要請されることになるとの展望を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまでの研究を踏まえ、本研究課題のテーマに関連する論文、教科書、解説書、翻訳等を公表するとともに、国際学会等において関連する研究報告等を行うなど、当初の研究計画に照らして、おおむね順調に研究が進展しているものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の最終年度となる2019年度は、本研究で明らかになった知見を整理した上で、ビッグデータ時代において表現の自由とプライバシーの価値を調整・統合し、両者を実効的に保障するための制度設計の枠組みの全体像を示すこととしたい。
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Research Products
(13 results)