2017 Fiscal Year Research-status Report
商標の保護により生じる競争制限的効果の解消-非伝統的商標と機能性-
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16K17041
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Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
小嶋 崇弘 中京大学, 法学部, 准教授 (80722264)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非伝統的商標 / 商品の形態 / 機能性 / 立体商標 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、商品間の競争の維持・促進を図るという観点から、標識法(商標法・不正競争防止法2条1項1・2号)に基づく非伝統的商標(商品の形態等を含む)の保護の限界を探ることを目的とする。研究2年目に当たる今年度は、以下の検討を行った。 第1に、初年度に引き続き、技術的機能に由来する商品の形態等に対する保護を否定すること(いわゆる技術的機能性)の正当化根拠について、これまでに行った米国法および EU商標制度の研究成果に基づいて検討を行った。その結果、具体的には、技術的機能性の適用に際して、産業財産権法との調整は主たる考慮要素とすべきではなく、(後述する美的機能性とともに)商品間の競争に対する阻害の程度を基準に一元的な基準に基づいて判断すべきであると結論づけた。 第2に、技術的機能とは関係のない商品の形態等について、商品間の競争を維持・促進することを目的に保護を否定すること(いわゆる美的機能性)の正当化根拠およびその判断基準について外国法の調査を行った。米国商標法においては、複数の巡回区で美的機能性の適用を認めた裁判例が存在するものの、特許法との調整を重視する技術的機能性に比べると裁判所は同法理の適用に消極的な態度を示している。EUでは、「商品に実質的な価値をもたらす形状のみからなる商標」(EU商標規則7条(1)(e)(iii)等)について登録を阻却する規定が存在するところ、近時のCJEUの判決によれば、同規定の適用が認められるのは、もっぱら芸術的または装飾的価値を有する商品に限られず、芸術的または装飾的価値の他に、機能的価値に関する本質的特徴を有する商品の形状も含まれると判示された。 以上の研究成果は、2017年8月に開催された同志社大学知的財産法研究会で報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、研究成果を論文として公表するまでには至らなかったが、上述の通り、当初予定していた外国法調査の大部分を終え、その成果を国内の研究会において報告した。 現在は、報告の際に得られたフィードバックを基にさらに検討を進めている。2018年6月には、本研究課題の中間報告として、学会報告を行うことを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も、当初の研究計画に沿って研究を進める。第1に、米国およびEUの外国法調査に関して、残された事項の調査を完了することを目指す。具体的には、標識法に基づく商品の形態等の保護と意匠法に基づく保護の関係性などについて検討を行う必要がある。 第2に、外国法調査の成果に基づき、我が国の標識法における機能性法理の正当化根拠について検討を行う。具体的には、産業財産権法に基づく保護と標識法に基づく保護を重複して受けることの当否などの問題を検討する。
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Causes of Carryover |
学会および研究会に参加するための旅費が当初想定していた額を下回ったため。次年度使用額は、関連する文献の購入に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)