2019 Fiscal Year Annual Research Report
Party politics during the economic crises in modern Japan
Project/Area Number |
16K17045
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
伏見 岳人 東北大学, 法学研究科, 教授 (20610661)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日本政治史 / 東北開発 / 政党政治 / 地方利益論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究計画の最終年度に当たることから、四年間の研究の取りまとめを試みると同時に、その成果を今後に発展させるための応用作業に力を注いだ。 近代東北地方における経済危機と地方利益論の関係を考える上で最も興味深い事例はやはり昭和恐慌後の東北大凶作を受けて国家的に展開された東北振興調査会と様々な開発政策である。前年度までの資料調査を踏まえ、本年度はそれを学術論考にまとめる準備を進めた。当時の政党政治の流動化を背景として、東北開発政策が他の政治課題より下位に次第に位置づけられることで、体系的な政策が実施されずに終わり、結果的に小規模な開発機関の設立のみにとどまった経緯を、新出の一次資料に基づいて議論することができたと考える。 しかし、この論考を取りまとめる過程で、東北地方をめぐる開発政策の特徴は、1930年代だけにとどまらず、その後の戦後政治においても繰り返されるパターンであることが、より顕著に見えてきた。戦後復興の文脈においても、食糧の安定供給先として東北開発論が浮上し、世界銀行(国際復興開発銀行)からの借款を介した農業改革論なども注目された。それらが、保守政党政治家による1957年の東北開発三法の制定に至るまでの過程を、史料に基づいて実証的に議論するための作業を行った。 さらに高度成長期後の東北新幹線や高速道路網などの建設にも関与した東北選出の国会議員の資料などを調査し、その中でも特に自民党副総裁まで務めた椎名悦三郎に関する分析を行い、一般公開のシンポジウムなどで研究成果を発表した。 これらの成果により、東北開発をめぐる政党政治の特質は、明治後期に原型が形成され、それが昭和前期にも残存し、さらには戦後政治にも大きな影響を及ぼしたという見通しを立てることができた。
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