2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17049
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川島 佑介 名古屋大学, 法学研究科, 学術研究員 (60760725)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 都市政治 / 都市行政 / 世界都市 / 都市間競争 / 中央地方関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度の上半期は、三つの作業を行った。第一に、予定通り、ロンドンの世界都市化過程を分析した博士論文を単著(「都市再開発から世界都市建設へ:ロンドン・ドックランズ再開発史研究」)として公刊するべくリライト作業にあたった。第二に、1980年代中期における、東京の世界都市建設に関する資料を収集・分析した。この作業を受け、第三に、1980年代中期における世界都市建設に関する学会報告(日本比較政治学会「世界都市建設の比較政治学:ロンドンと東京」)を行った。本報告では、ロンドンにおいては、中央政府が地方自治体を強く管理していたのに対し、東京においては、中央政府が地方自治体間の競争を容認していたことを明らかにした。前者を管理型都市建設、後者を競争型都市建設と名付け、対比的に提示した。
下半期は三つの作業を行った。第一に、出版社のアドバイスを受け、単著の再リライトにあたった。第二に、世界都市博覧会中止の論文の確認を行った。本稿は、青島幸男都知事が世界都市博覧会の中止を選択した理由を、自治体間関係と中央地方関係から説明するものである。すなわち、かつては強かった都市間競争が弱くなり、世界都市博覧会を中止しても、世界都市機能を奪われなくなったことおよび、やはりかつては世界都市建設に圧力をかけてきた中央政府が、1995年の都知事選挙を受けて圧力を弱めたことが、青島の決断を促したと言える。本稿は、2015年度に執筆されたが、2016年度下半期の校正にあたり、その論旨が妥当であることを改めて確認できた。第三に、2017年5月に行われる日本行政学会での報告準備にあたった。この報告では、日本の競争的都市建設を都市政治という観点から捉えなおし、提示することを試みている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
想定よりも遅れている点は、以下の二点である。第一に、ロンドン渡航を延期せざるをえず、東京、横浜、大阪における資料収集も不十分であった。第二に、コンピュータを用いて資料を量的に解析する手法を確立することができなかった。これらは、他の研究・教育業務が思いのほか多くなってしまい、まとまった作業時間を確保できなかったことが原因である。
逆に想定よりも進んでいる点は、以下の三点である。第一に、1980年代半ばの資料を読み込み、ロンドンと東京の世界都市建設過程を明らかにした。第二に、その理論的成果として、ロンドンを管理型都市建設、東京を競争型都市建設として、対比的に提示することができた。第三に、1995年の世界都市博覧会の中止について分析・再確認することによって、日本の都市建設における都市間競争の圧力と中央政府からの影響の大きさを論証することができた。
以上のように、各分野において進展の度合いは異なるものの、ロンドン・ドックランズ地区の再開発分析の単著を脱稿することができたこと、ならびに、ロンドンを管理型都市建設、東京を競争型都市建設として、対比的に提示することができたことの二点が達成されたことにより、「おおむね順調に進展している」と言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
ロンドンを管理型都市建設、東京を競争型都市建設として、対比的に提示したわけであるが、これは仮説的見解にすぎないため、論証ないしは修正が必要である。
まずは、当初の予定通り、1980年代半ばの世界都市建設初期における両都市の対比的分析を論文というかたちでまとめる。並行して、2016年度の「宿題」としてしまった、資料収集にあたる。その後、新たな資料を分析対象に加えることで、世界都市建設の衰退期の共時的比較分析を行う。
|
Causes of Carryover |
まとまった時間をとれず、あまり資料収集に行けなかった等の理由により、2016年度は、自宅や研究室でもオンラインで収集できる資料を優先的に用いた。そのため次年度に持ち越しが発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
ロンドン・東京・横浜・大阪の各都市に出張し、資料収集ならびにインタビュー調査を遂行する。
|
Research Products
(3 results)