2016 Fiscal Year Research-status Report
思想的伝統としての現実主義―形成過程の遡行による再考
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16K17066
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
西村 邦行 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (70612274)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 現実主義 / トゥキュディデス / マキァヴェリ / ホッブズ |
Outline of Annual Research Achievements |
計画書作成段階において予定していたとおり、初年度にあたる今年度は、主として国際政治学における現実主義の系譜の遡行を行った。ただし、その過程において、主として政治哲学における文献についても一部検討を行うこととなった(今年度の研究の推進方策参照)。 まず、学部・大学院教育で広く用いられている教科類については、この10年ほどのあいだに出された主要なものにおいて、現実主義の伝統に関してほぼ共通の理解があること、にも拘わらずその出典は明らかにされないことが確認された。こうした傾向は、1980年代以降の教科書・リーダー類でも同様であった。他方、それ以前になると、トゥキュディデス、マキァヴェリ、ホッブズという布陣にばらつきがあること、多くの場合はやはり出典が明記されていないこと、しかし、1930年代から50年代までに出されたいくつかの国際関係思想史関係の書物に沿っているらしいことが確認された。この点は、英語圏の(国際政治学に限らない)政治学の主要雑誌に掲載された諸論考からも確認できた。 こうして1960年代から1970年代が一種の過渡期となり、それ以降は現実主義の伝統が固定化していることを考えると、トゥキュディデス、マキァヴェリ、ホッブズという組み合わせをとることは、この時期に進んでいた国際関係論のディシプリンとしての確立という論点と密接に関係する様子がうかがわれる。具体的には、この三者の組み合わせが確固たるものとなっていく流れは、国際関係が国内関係とは異なるという、国際社会=無政府型の理解を基に国際体系に関する理論を組み立てていく動きと連動している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書に記載していた内容を、ほぼ予定通りに終えている。
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Strategy for Future Research Activity |
計画書においては、便宜的に、一年目に国際政治学、二年目に政治哲学の文献を追っていくという形を予定していたが、実際には、(半ば当然ではあるが)過去にさかのぼるほど両文献は入り混じる傾向にある。一年目には、主として政治哲学に関連する文献についても近年のものは目を通し終わっており、逆に国際政治学に関しては20世紀半ばのものだと新たに検討するを要する文献が現れてきている。この点を受けて、二年目は、20世紀半ば以前の文献について、国際政治学か政治哲学かを区分せず分析を進めることとする。特に国際政治学において出典なく表れてきたトゥキュディデス、マキァヴェリ、ホッブズという組み合わせが、どこに端を発するのか(あるいはそもそも明確な起源などないのか)を明らかにする上で、これら各思想家の研究史も追う。
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Causes of Carryover |
2017年度に刊行予定であることが分かっていた書籍費分を確保しておいたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度に購入。
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