2017 Fiscal Year Research-status Report
「国内政治体制をめぐる国際政治」とその帰結-理論枠組みの構築と実証分析
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16K17069
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
湯川 拓 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (80728775)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 選挙監視 / 民主化 / 民主革命 / クーデタ |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は前年度までに作成したデータセットや収集した資料、あるいは前年度までに得た理論的着想や構築した理論枠組みに基づいて、積極的にアウトプットを行った。 第一に、選挙監視研究については、選挙監視の結果(判定)がもたらす情報という点に注目した上で、「選挙監視の帰結」について理論的な研究を行った。具体的には、選挙監視によって当該選挙の質についての情報が発信されることが、国際社会との関係や国内政治において、どのような影響を与えるのかについて考察を行った。この点は和文および英文でそれぞれ別のペーパーを執筆・投稿し、いずれも査読付き学術雑誌に掲載されることが決定した。 第二に、選挙監視に関連して、「効果」ではなく、なぜ選挙監視を呼ぶのかという「受け入れ」についても理論的に考察する作業を進めている。これについては現在はデータをまとめている作業に着手している段階である。 第三に、民主革命(democratic revolution)について考察を行った。具体的には、革命の際に掲げられるスローガンという切り口から、一連のカラー革命やアラブの春について、運動についての新たな側面を指摘することを試みた。この成果は英文で二本のペーパーとしてまとめ、一点は現在、海外査読付き学術雑誌に投稿し、「修正後再投稿」の状態であり、掲載を目指して作業中である。もう一点はワーキングペーパーとしてまとめており、近日中に発表の予定である。 第四に、東南アジア国際関係についての研究も進めた。東南アジア諸国連合に注目して英語でペーパーを二本執筆し、一本は海外査読付き学術雑誌において受理・掲載された。もう一本は現在査読プロセス中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アウトプットが順調であったことが上記の評価の理由となる。 査読付き学術雑誌に掲載されたあるいは掲載が決定した論文が三本あり、内二本は海外ジャーナルである。その他、一本は「修正後再投稿」、もう一本は「査読中」であり、いずれも海外ジャーナルである。 加えて、学術書の一章という形で執筆した論文などもあり、非常に生産的な一年であった。
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Strategy for Future Research Activity |
「選挙監視」「民主革命」「クーデタ」という三つのトピックを軸に、民主化という国内政治における変動と国際関係の連環を考察するのが本プロジェクトの基本的な目的である。 このうち、「選挙監視」については「帰結」の側面について、新たな理論的基盤となる業績を2017年度の内に発表することができた。今後は二点の研究を予定している。一点は、選挙監視の「受け入れ」について、理論的な考察を行うことである。もう一点は選挙監視レポートについてテキスト分析を行うことである。そのためには監視レポートを網羅的に収集した上で、それらに対しテキスト分析を行うことができるように処理を行うことが必要である。 「民主革命」については、これも基盤となる論文が現在査読付き学術雑誌において「修正後再投稿」なので、これを掲載まで持っていくための修正作業を行っていく。 現段階で形になっていないのが「クーデタ」についての研究である。クーデタについては、過去の事例において軍がクーデタをおこした際にそれをどのように正当化してきたのか、という正当化のロジックを資料から取集・整理することがまずは重要である。これについてもこれまで作業を進めてきたが、論文としてまとめるにはまだ不十分である。したがって、まずはRAを雇用しつつこの作業を進めることを予定している。その後に、そこで得たデータについて分析を行い、2018年度中に投稿にまで持っていくことを目標とする。
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Causes of Carryover |
おおむね順調に使用したが、少額の未使用金が発生した。平成30年度の資料収集に伴う旅費について使用する予定である。
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