2016 Fiscal Year Research-status Report
近年の通常兵器規制の特質と背景:安全保障研究と歴史研究の連携を目指して
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16K17075
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
榎本 珠良 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員(共同研究員) (50770947)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 安全保障研究と歴史研究の連携 / 軍備管理・軍縮研究 / 批判的安全保障研究 / 武器移転規制の歴史と現在 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.史料調査とインタビュー 当初の予定どおり、イギリス・ロンドンのナショナル・アーカイヴズにおいて、1980 年代以前の通常兵器規制に関する資料を収集し、分析を行った。明治大学国際武器移転史研究所の歴史学者より調査方法について助言を受け、海外の研究協力者と情報交換することにより、短期間で効率的に資料収集・分析を進めた。実務者・研究者のインタビューについては、平成28年8月に出席した武器貿易条約(ATT)締約国会議の場で、関係者にインタビューを行った。 2.連携研究と成果発表 国内外の歴史学者や安全保障研究者との連携研究と成果発表は、当初の計画より早いペースで進展した。まず、主権国家システム形成期から現在までの非国家主体に対する武器移転規制について研究を進め、平成28年7月の同研究所の国際ワークショップにて発表した。その後、海外の研究協力者らのコメントを受けながら英文論文を執筆し、平成29年1月刊行のジャーナルにて発表した。次に、海外の研究協力者との研究を進め、『国際政治史における軍縮と軍備管理』(日本経済評論社、2017年3月刊行)に章の内容を連動させる形でそれぞれ章を執筆した。この書籍の執筆陣は歴史学者と安全保障研究者・実務者であり、19世紀から現代までの軍縮・軍備管理の歴史を考察し、過去の時代に関する研究が現代の政策論議に対して持ちうる示唆を検討する内容となった。当研究代表者は、この図書の編者として、19世紀末から現代までの軍縮・軍備管理の変遷を序章にて概説し、歴史学と国際政治学や安全保障研究の学際的・国際的な研究に向けた課題を終章にて考察した。最後に、通常兵器規制の「現場での取り組み」(余剰兵器の回収や平和構築活動)についても、国内外の研究協力者を確保し、平成29年度以降の共同研究の目途を立てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
海外での史料調査とインタビュー調査は、おおむね当初の計画通りに進展した。国内外の歴史学者・安全保障研究者との連携とその成果発表については、下記のように、当初の計画以上に早く進展した。よって、全体的には当初の計画より早く進展したと言える。 1.武器貿易条約(ATT)について、締約国会議への参加等をもとに動向を分析して研究ノートを発表した。締約国会議前後にはSNS等で情報発信し、会議後に公開報告会(参加者約80人)と対NGO非公開報告会(参加者約15名)を開催し、関係各方面との議論を深めた。 2.ATT交渉およびその後のプロセスを通じて論争されてきたテーマ(非国家主体への武器移転規制)に焦点を当てて研究を進め、主権国家システム形成(とりわけ19世紀)から現代までの規制言説・実践と、国家主権概念の変容との関係を考察した。平成28年7月の国際ワークショップで発表し、その後、海外の研究協力者らのコメントを受けつつ英文論文を執筆し、平成29年1月刊行のジャーナルにて発表した。 3.海外の研究協力者との研究を進め、『国際政治史における軍縮と軍備管理』(日本経済評論社、2017年3月刊行)にそれぞれ章を執筆した。この書籍の執筆陣は歴史学者と安全保障研究者である。この図書は、19世紀から現代までの軍縮・軍備管理の歴史における、武器移転規制と軍備の削減・制限の位置付けや関係性を考察し、過去の時代に関する研究が現代の政策論議に対して持ちうる示唆を検討する内容となった。本研究の代表者は、当該書籍の編者として、19世紀末から現代までの軍縮・軍備管理の変遷を序章にて概説し、歴史学と国際政治学や安全保障研究の学際的・国際的な研究に向けた課題を終章にて考察した。 4.通常兵器規制の「現場での取り組み」(余剰兵器の回収や平和構築活動)に関して、国内外の研究協力者を確保し、平成29年度以降の共同研究の目途を立てた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29 年度以降も、現在進行形の通常兵器規制の政策論議を引き続き把握・分析しつつ、史料調査やインタビュー調査を継続し、研究会・学会での報告や、学術誌への投稿を試みる。平成29年度は以下3点を重点的に扱い、研究およびその成果発表を実施する。 1.非国家主体への武器移転規制の歴史に関する考察を引き続き深め、学術誌への投稿や学会報告などを行う。 2.通常兵器規制の「現場での取り組み」(余剰兵器の回収や平和構築活動)に関しては、既に国内外の研究協力者を確保し、平成29年度以降の共同研究の目途を立てている。これについて平成29年度も調整と研究を進め、平成29年度末までに研究会ないしワークショップを開催する。 3.計画時に考察対象とした「1990年代以降の3つの現象」のうち、1年目の研究において十分に扱わなかった現象(特定の兵器を「非人道的」と見做して開発・使用・貯蔵・移転等を禁止することが提唱され、国際合意形成が進展した現象)に焦点を当てる。そのうえで、明治大学国際武器移転史研究所でのスケジュールと部分的に連動させ、国内外の歴史学者と安全保障研究者による共同研究を形成する。
なお、当初想定していた海外の研究協力者のうち、本研究代表者に研究内容が最も近い研究者が、海外出張等により不在にすることが困難な状況となっている。この状況が数年内に変化する可能性は低いと思われる。引き続き連絡を続けつつ、最終年(4年目)の東京での国際セミナー開催が困難になる可能性も視野に入れて、他の海外研究協力者とも調整のうえ、3年目以降の展開を検討したい。
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Causes of Carryover |
1.当初はイギリスでの史料調査時にインタビュー調査を実施する予定であったが。イギリス出張に先立って参加した国際会議にて、インタビュー予定者に話をすることができた。したがって、調査出張の日数を短縮し、コストを若干削減することができた。 2.東京―ロンドン往復のフライトおよび現地宿泊先を、想定より安く確保したため、コストを若干削減することができた。 3.史料調査をロンドンのナショナル・アーカイヴズで実施したが、史料の写真撮影が可能であったため、複写費用と複写資料郵送費用がかからなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、海外での史料調査や国内学会での報告を予定しているため、それらの旅費等に使用する計画である。
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Research Products
(9 results)