2018 Fiscal Year Research-status Report
近年の通常兵器規制の特質と背景:安全保障研究と歴史研究の連携を目指して
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16K17075
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
榎本 珠良 明治大学, 研究・知財戦略機構, 客員准教授 (50770947)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 安全保障研究と歴史研究の連携 / 軍備管理・軍縮研究 / 批判的安全保障研究 / 武器移転規制の歴史と現在 / 兵器禁止規範の系譜学 / 武器の入手可能性と暴力との関係性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.史料調査とインタビュー 平成30年度に実施予定であったアメリカでの史料調査を平成29年に度前倒しして実施したため、平成30年度は史料収集目的の出張を実施せず、史料の分析に集中した。平成30年8月に、通常はジュネーブで開催される武器貿易条約(ATT)締約国会議(CSP)が東京で開催されたため、その際に関係者へのインタビュー調査を行った。 2.連携研究と成果発表 国内外の研究者との連携研究と成果発表は、研究代表者が所属する研究所の計画と連動させることにより、当初の計画より早いペースで進展している。まず、国際武器移転規制については、8月のCSPに向けて海外研究者を招聘のうえ国際シンポジウムを開催して研究報告を行い、約180名の参加を得た。CSP4中にも、海外の研究者を招き、本会議の合間に武器の流用に関するサイド・イベントを開催した。また、ATTの履行状況や課題について調査を実施し、会議後に複数の報告会で報告し、CSP4を踏まえた課題を『世界』および『国際武器移転史』に発表した。平成29年度まで集中的に研究した非国家主体への武器移転についても、引き続き国際シンポジウム等で発表した。 次に、平成29年度末に開催した、武器の入手可能性と暴力との関係性に関する国際セミナーでの報告を基に、4本の英文論文による『国際武器移転史』特集を発表した。また、同テーマで単独にて平成30年度の日本軍縮学会研究大会で報告のうえ、日本軍縮学会設立10周年記念論文集『軍縮・不拡散の諸相』に発表した。 最後に、特定の兵器の使用等を禁止する発想や取り組みに関しては、平成29年に立ち上げた国際共同研究プロジェクト「パーリア・ウェポンズ」を引き続き運営した。平成31年度の共著刊行を目指して、海外から研究者を招聘するなどして複数の国際・国内セミナーを開催し、国際安全保障学会でパネル報告を実施し、各章の執筆を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
海外での史料調査とインタビュー調査が当初の計画より若干早いペースで進展している。国内外の研究者との連携とその成果発表についても、下記のように当初の計画より早いペースで進展している。 1.平成28-30年度に、武器貿易条約(ATT)締約国会議(CSP)等に参加して動向を分析して論考を発表し、国際会議や国内セミナー・報告会等で報告した。平成30年には日本でCSPが開催されため、この機会を活かすべく、当初は平成31年度に予定していた国際セミナーを平成30年度のCSP直前に変更した。当初の想定よりも大規模なシンポジウムにしたうえで、同時にCSPのサイドイベントも開催した。研究成果を発表しつつ、関係各方面との議論を促進し、国内・国際的に研究の社会還元をはかった。 2.ATT関連で論争されてきたテーマ(非国家主体への武器移転規制)に焦点を当て、英語での国際シンポジウム・セミナー報告や論文発表を行ったほか、日本語での学会報告や論文発表も行った。 3.平成28年度に海外の研究協力者とともに『国際政治史における軍縮と軍備管理』を刊行した。その後、新たな研究協力者を模索し、平成29年度に招聘して国際セミナーを開催し、平成30年度の『国際武器移転史』に掲載した。 4.武器の入手可能性と暴力との関係性について、平成29年度に国際セミナーを開催し、成果を平成30年度の『国際武器移転史』特集として発表した。同テーマで単独にて学会報告のうえ、日本軍縮学会設立10周年記念論文集『軍縮・不拡散の諸相』にて発表した。 5.特定の兵器の使用等を禁止する発想や取り組みに関して、19世紀から現代までの事例を扱う国際共同研究「パーリア・ウェポンズ」を平成29年度に立ち上げた。国内外の研究者の参加を得て、複数の国際セミナー・国内セミナーや学会パネルを企画・開催したほか、平成31年度の図書刊行に向けた執筆・調整を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度も、現在進行形の通常兵器規制の政策論議を引き続き把握・分析しつつ、研究会・学会での報告や、学術誌への投稿を試みる。ただし、平成31年度は最終年度であるため、調査よりも研究発表を重視する。 1.平成30年に東京で開催された武器貿易条約(ATT)締約国会議(CSP)直前に開催した国際シンポジウムの報告者と連携し、報告に基づきつつアップデートした一連の論考を、平成31年7月刊行の『国際武器移転史』第8号に特集として掲載する。第8号は翌8月にジュネーブで開催されるCSPにて配布し、研究成果を発表しつつ国内・国際的な社会還元を試みる。また、関連の報告会・講演会にて報告を行う。 2.国際武器移転規制の歴史と現在について、平成31年度までの研究に基づいた単著を執筆・刊行する。 3.平成29年度に立ち上げた「パーリア・ウェポンズ」プロジェクトを平成30年度も引き続き運営し、編著を執筆・刊行する。刊行後には公開の記念シンポジウムを開催し、関連分野の研究者との議論を深めるとともに、より広い層への社会還元を試みる。
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Causes of Carryover |
・理由は以下のとおりである。 1.[出張旅費と謝金の削減]平成30年度に実施予定であったアメリカでの史料調査を平成29年度に前倒しして実施した。さらに、平成29年度までの出張については、他の資金と掛け合わせたため、フライト回数・コストや出張日数・日当等を削減することができた。また、平成30年度およびそれ以前の年度のインタビュー調査の際に謝金を受領されないケースが多く、謝金支出の削減につながった。 2. [イベント招聘費用の削減]平成30年度に武器貿易条約(ATT)の締約国会議(CSP)が東京で開催されたため、本来は平成31年度に開催予定であった国際セミナーを平成30年度に前倒しし、当初の中規模国際セミナーの予定を拡大して大規模な国際シンポジウムとして開催し、CSP中にもサイドイベントを行った。この際に招聘した海外研究者のうち、当初からCSPに参加を予定していた(所属組織にて予算を確保していた)研究者がいた。また、複数の研究プロジェクトによる共催で国際シンポジウムを開催したため、他の研究費予算により招聘した研究者もいた。それゆえ、招聘費用が大幅に削減された。 平成31年度は、最終年度のため主に研究成果の発表のために使用する。
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Research Products
(24 results)