2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17081
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
平田 大祐 一橋大学, 社会科学高等研究院, 講師 (40754809)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 信念の異質性 / 最適契約 / 内的動機づけ |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に,平成28年度から継続している「信念の異質性と内的動機づけの相互連関」についての研究を進め,中間成果を組織の経済学分野の国際学会であるSociety for Institutional and Organizational Economics, 研究分野の近い研究者が多いオーストラリアの主要大学であるUniversity of Technology Sydney, University of Queensland, University of Melbourneの学内セミナーで報告した.いずれの発表機会でも研究を発展・完成させる上で有益なフィードバックを得ることができた.
第二に、上記の研究に関連して,「プリンシパルが情報優位にある場合の最適労働契約」の研究を行った.プリンシパルに情報優位がある場合には,(1) 私的情報の漏洩を防ぐためにエージェントの属性に依存しない労働契約を結ぶこと(pooling)が最適となる可能性,(2)エージェントの外部賃金が高まることでプリンシパルの利潤が高まる可能性, (3)プリンシパルの利潤がエージェントの外部賃金に関して不連続に変動する可能性,が存在することを示した.これらはいずれも、エージェントに情報優位がある場合には現れない含意である.特に(1)の可能性は,雇用者にとって追加的な情報は有益にならないことを意味し,新卒労働市場において国際的に広く観察される「青田買い(unraveling)」の問題に対する一つの理論的説明となる.特に対称情報を仮定した既存理論に比して,「なぜ(被雇用者ではなく)雇用者側だけが採用を前倒しにする誘因を持つのか」を説明できる点に本研究の独自性がある.この成果は国際学会Association for Public Economic Theoryで報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概要で述べた二つの研究に関しては,中間成果をセミナー・学会で報告する段階には達しており,また発表で得たフィードバックを基に研究内容は進展している.しかし研究論文として完成し学術雑誌に投稿する段階には至っておらず,当初の「研究論文としてまとめる」という目標からはやや遅れている.
研究計画で述べた「コミュニケーションと意思決定プロセス」については,当初の想定以上に分析が煩雑となったことから,報告可能な形に中間成果をまとめる段階に至っておらず,こちらも当初計画に比してやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
信念の異質性と内的動機づけの相互連関」および「プリンシパルが情報優位にある場合の最適労働契約」の研究については,それぞれ29年度中に得られたフィードバックを基に引き続き分析を進める.30年度中に研究論文としてまとめ,ディスカッション・ペーパーとして公開しつつ学術雑誌に投稿することを目標とする.
「コミュニケーションと意思決定プロセス」については,分析の複雑化を抑えるために,より単純な理論モデルを分析する.具体的には,これまで垂直的なコミュニケーションと水平的コミュニケーションを同時に分析するために3主体のモデルを分析してきたが,より単純な2主体のモデルを分析することで,垂直と水平のそれぞれのケースを個別に分析する.このような単純なケースにおいて学会報告可能な成果をまとめることを30年度の目標とする.
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Causes of Carryover |
(理由)研究成果発表のための出張旅費を別財源で賄うことができたため.また資料の電子化を進めた結果,トナーなどの消耗品に係る物品費を節約できたため.
(使用計画)物品費および出張旅費として使用する予定である.特にAsia Pacific Industrial Organization Conference等,当初計画になかった国際学会でも研究報告を行うために使用する.
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Remarks |
上記の他にUniversity of Technology Sydney, University of Queensland, University of Melbourneの学内セミナーで研究成果を報告した.
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