2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K17087
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
安達 剛 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (00535122)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | メカニズムデザイン / 遂行理論 / 耐戦略性 / セキュア遂行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は弱支配戦略の逐次消去による遂行というアプローチから本研究課題への研究を進めた。支配戦略の逐次消去は、最適応答の均衡というナッシュ均衡をベースとしたアプローチと異なり、人々の他者の行動に対する予想により柔軟な考え方を採用している分、人々の行動原理に対する仮定の少ないアプローチである。このアプローチを用いた遂行理論の研究としては、Bergemann et. al. (JET, 2011)が強支配戦略の逐次消去を、Matsushima (JET, 2008)が完備情報下の弱支配戦略の逐次消去を検討しているが、不完備情報下の弱支配戦略の逐次消去を検討したものは確認できていない。本研究では不完備情報下の弱支配戦略の逐次消去による遂行が、選択ルールの耐戦略性と非介入性によって特徴づけられることを明らかにした。これらの2条件は連立対戦略性に関連した概念として割当問題などでその特性が検討されてきており、本研究はこれらの2条件についての新しい意義を明らかにしたものと言える。 このアプローチの最も興味深い点は、この遂行が直接顕示メカニズムによって機能するだけでなく(顕示原理)、本研究課題が研究対象としてきた展開型メカニズムである逐次顕示メカニズムにおいても同様に機能する点である。すなわち、耐戦略性と非介入性を満たす選択ルールは逐次顕示メカニズムにおいても弱支配戦略の逐次消去によって遂行可能である。さらにこのとき、この逐次顕示メカニズムは任意の部分ゲーム完全均衡によっても選択ルールを遂行する。この意味で、このメカニズムは弱支配戦略の逐次消去と部分ゲーム完全均衡という2つの解概念によるセキュアな遂行を実現しており、本研究はこの2重遂行を特徴づけるものと言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は昨年度までの『弱支配戦略』と部分ゲーム完全均衡の2重遂行というアイデアに変えて、『弱支配戦略の逐次消去』と部分ゲーム完全均衡の2重遂行という形でセキュア遂行を定式化することによって、従来のセキュア遂行のアイデアを継承しつつ、展開型メカニズムによるセキュアな遂行について、選択ルールに対する条件と用いるメカニズムの両面から比較的単純で実用性のある結論を得ることができ、本研究の大きな里標に到達できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度は本研究の成果をメカニズムデザインの主要な国際学会であるConference on Economic Design (Hungary)等の学会、セミナーで本年度の研究成果を報告し内外の専門家から助言を得ることで、本研究の意義、関連研究、付随的な結果についての把握・整理を行う。その後、本研究を論文としてまとめ国際学術雑誌に投稿する。
|
Causes of Carryover |
英文校正費について学内の研究費を利用できるようになったため、その分の本年度支出予定額が減少した。この分については次年度の分と合わせて次年度出張用のノートパソコンの購入費に充てる。
|
Research Products
(1 results)