2017 Fiscal Year Research-status Report
ロバート・トレンズの貿易および植民に関する経済政策思想についての総合的研究
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16K17095
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
久松 太郎 同志社大学, 商学部, 准教授 (60550986)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ロバート・トレンズ / 機械輸出問題 / トレンズ=シーニア論争 / リカード・モデル / 動学均衡成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に続いて山本勝造関東学院大学准教授を共同研究者と打合せを重ね、19世紀前半のイギリス議会における機械輸出問題に関する理論モデルを構築した。具体的には、前年度よりその構築が課題となっていた、比較優位の原理をベースにしながら貿易当事国の貿易パターンを逆転させうるような理論モデルがほぼ完成した。 また貿易政策思想研究におけるトレンズ=シーニア論争を分析する過程で、多くの興味深い論点が得られた。これらの成果をまとめたものは、2018年度の経済学史学会第82回大会での報告にエントリーし受理されている。またトレンズ=シーニア論争研究については、その一部がRogerio Arthmar教授(Universidade Federal do Espirito Santo)との共同研究でも利用されており、2018年のESHET-Conferenceでの報告(報告者はArthmar教授)にエントリーした。 トレンズ貿易論とリカード・モデルの関係を分析したDP論文(前年度発行)は、新資料が加えられて、リカードウ研究会第35回例会と同志社大学商学会研究報告会にて報告された。その一部を含んだ、同志社大学田淵太一教授との共同研究論文「リカードはリカード・モデルを提示したのか」)は、同教授によって日本国際経済学会第76回全国大会で報告され、その後、当学会発行の学術誌『国際経済』に投稿された。 関連する研究として前年度に発行された、トレンズと古典派成長理論についてのDP論文は、タイトルの変更と内容の大幅な改訂をともなって、"Robert Torrens and the Ricardian Model of Dynamic Equilibrium Growth"と題してThe European Journal of the History of Economic Thoughtに掲載受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の本来の目的からすれば「やや遅れている」との判断を下さなければならないが、関連研究を含めたより大きな視点でみると、本年度の進捗状況は順調だったといえる。なぜならば、関連する研究論文"Robert Torrens and the Ricardian Model of Dynamic Equilibrium Growth"が、経済学史分野で国際的に権威ある学術誌The European Journal of the History of Economic Thoughtに掲載受理されたからである。しかしそのための改訂作業に多くの時間を割かなければならなかったために、本来予定していた研究の遂行に支障が出てしまった。しかしながら共同研究の面では、前年度よりその構築が課題となっていた、比較優位の原理をベースにしながら貿易当事国の貿易パターンを逆転させうるような理論モデルをほぼ完成させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者による単独作業としては、トレンズ=シーニア貿易政策論争が古典派貿易理論に与えた影響についての研究をまとめ、経済学史学会で報告する。山本准教授との共同研究では、本年度完成させた理論モデルが適切なものであるかを検証し、その適切性が確認されれば、それに歴史的事情等を加えて論文として仕上げる。Arthmar教授との共同研究では、それぞれ個別に行ってきた研究を合わせて、論文を完成させる。
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Causes of Carryover |
研究代表者にとって新しい所属機関での第1年目という事情もあり、当初予定していた共同研究者(海外の研究機関に所属)の招聘ができなかったことなどによって未使用金額が生じてしまった。本年度は、招聘できなかったArthmar教授と電子メールを通じて研究を進めてきたが、次年度は同教授を招聘するために本年度の残額を利用する予定である。また別の共同研究者である山本准教授は、次年度9月より在外(アメリカ・シアトル)研究を行うことになっている。そのため、本年度までは国内で行っていた共同研究をアメリカで行わなければならない可能性が生じた場合には、その費用にも充当する予定である。
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Research Products
(6 results)