2019 Fiscal Year Annual Research Report
Takahashi Kamekichi's Economic Thought
Project/Area Number |
16K17098
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
影浦 順子 中部大学, 現代教育学部, 助教 (20704802)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 高橋亀吉 / 中小工業論 / 農業経済論 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)高橋が提起した日本資本主義変革論のうち中小工業の編成内容について、『現代中小商工業論』、『日本工業発展論』などをもとに分析した。その結果、①日本工業の段階を、プチ工業国と表現した高橋が、そのプチたる論拠を、日本工業における中小工業の数の多さと低賃金労働の利用に求め、これら特殊な優位性を克服することなくして、今後の日本工業の発展は見込めないと考えていたこと、②その具体的な解決策として、国家主導による工業組合の統制と組織の合理化などを提起したことを明らかにした。③またこれらの議論に疑問を呈した有沢広巳の中小工業論批判について、有沢が中小工業を資本主義の発展にしたがい自然消滅するものと考えていたこと、生産力拡充の観点から大工業に重点を置く政策を展開していたことなどを、高橋との違いとして整理した。課題として、中小工業で生産される工業品が、当時の日本の生産力拡充にどこまで貢献できたのか、などを議論する必要があることが分かった。
2)高橋が提起した日本資本主義変革論のうち農業経済の編成内容について、『日本農村経済の研究』、『日本農業統制と産業組合』などをもとに分析した。その結果、①高橋が日本の農業経済の後進性を、国内向けの米作中心の生産関係および寄生地主制に見られる階級関係などに求めていたこと、②小作農を独立自由な農民として解放・育成するために、産業組合・農業組合の設立を要請し、高付加価値をもつ輸出向けの農産品を創出するよう提起していたことを明らかにした。③ただし、産業組合の自主性だけでは不十分と考えた高橋は、米穀専売制など国家による生産統制も合わせて主張していたことを確認した。課題として、世界恐慌以降、結果的に農業経済の再編が、組合運動によってではなく、革新官僚主導の経済統制のプログラムのなかで担われてゆく過程を、高橋がどう考えていたのかを検討する必要があることが分かった。
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Research Products
(3 results)