2016 Fiscal Year Research-status Report
J.S.ミルを分岐点とした経済学観の転換に関する研究:価値論を中心として
Project/Area Number |
16K17099
|
Research Institution | Nagoya University of Commerce & Business |
Principal Investigator |
吉井 哲 名古屋商科大学, 経済学部, 教授 (10514341)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 価値論 / J.S.ミル / 過程分析 / equation / 限界革命 / 生産費 / 需要と供給 |
Outline of Annual Research Achievements |
5月に経済学史学会第80回全国大会(於東北大学)にて報告(論題「J. S. ミルはなぜ需給原理を基本原理としたのか?」)を行なった。J.S.ミルの価値論には「解釈上のアポリア」が残されていると言われる。それは、「生産費に先行し、それよりももっと基本的な価値法則―需要供給の法則―に立ちもどらなければならない。」(J.S. Mill 1848『原理』)とミルが述べる点である。すなわち、生産費原理によって価格が決定される任意可増財こそが、経済学において一番重要(特に収穫逓減産業)であるとミルは考えていたにも関わらず、任意不可増財の価格決定に用いる「需給原理」の方を基本原理としている点である。この点に関する解釈を、ミルが置かれた学術的環境、科学方法論、そして、生産費原理との関係から考察報告した。 "An extinction of adjustment time and an introduction of stability condition in economics through misunderstandings to J.S. Mill's law of supply and demand and international value theory"を執筆し、『A New Construction of Ricardian Theory of International Values: Analytical and Historical Approach』Springerの第8章として公刊された。本稿は、J.S.ミルの需給法則を現代のミクロ経済学における需給法則と後世の学者(特に、ジェンキンとマーシャル)が誤読し、それが経済学から時間的調整概念を排除し、加えて均衡の安定条件追求という研究テーマが発生したことについて執筆した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次年度に執筆予定の論文を先に執筆するなど、計画の変更はあったが、概ね計画通りに進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
”The correct understanding about supply-and-demand principle of J. S. Mill: A perversion of the principle by F. Jenkin, and the succession by A. Marshall”を執筆し、英文ジャーナルにに投稿する。本稿はJ.S.ミルの「Equation」解釈を通じた古典派経済学の再解釈である。J.S.ミルまでの古典派経済学においては、価格決定の等式を「均衡への傾向」を表すものと解釈すれば、これは均衡に至る経緯についての「過程分析」と言える。一方で、新古典派経済学では価格と数量が同時決定される市場均衡理論である。新古典派経済学とそれ以前の古典派経済学の価格理論を分ける際のメルクマールは、このような市場に対する見方(経済学観)である。 “Why J.S. Mill reverted to a principle of supply and demand anterior to that of cost of production?”を執筆し、英文ジャーナルにに投稿する。本稿は、昨年経済学史学会第80回全国大会(於東北大学)にて報告(論題「J. S. ミルはなぜ需給原理を基本原理としたのか?」)した原稿をもとに作成する。 学会報告締め切りに間に合えば、次年度執筆予定の“A study on the mystery of Ricardo’s permission about Malthus' law of supply and demand”を海外学会にて報告したい。
|
Causes of Carryover |
国際学会報告を平成28年度ではなく、平成29年度に変更した。かわりに平成28年度では国内学会で報告した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
国際学会報告費および、英文校閲費に使用する。
|
Research Products
(2 results)