2019 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on the Change of Economic View with J.S. Mill as a Turning Point: Focusing on Value Theory
Project/Area Number |
16K17099
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Research Institution | Nagoya University of Commerce & Business |
Principal Investigator |
吉井 哲 名古屋商科大学, 経済学部, 教授 (10514341)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Equation / 過程分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
J.S.ミルは財を以下三つに分類する。すなわち、①任意不可増財、②任意可増財A:収穫一定・費用一定、③任意可増財B:収穫逓減・費用逓増である。この内、①は需給原理、②、③は生産費原理によって価格が決定される。そして、ミルは需給原理を生産費原理に先立つ基本的法則とした。そのため、スミスやリカードウとは異なり、ミルは需給均衡説と考えられてきた。しかしながら、この評価は間違いである。ミルは需給原理において「Equation」と言っているが、これを「方程式」と捉え需要関数(D)と供給関数(S)が等しくなるときに価格が導出されると考えてしまうのは安易である。つまり、D (p)=S (p)によりpという価格が与えられるという誤った理解である。このように理解すると、ミルの需給理論は「部分均衡論の先駆け」(Marshal 1876)という評価となろう。 しかしながら、「Equation」は「方程式」と「等式」の二つの意味が考えられ、この場合は需要量と供給量が等しいというただの関係を表わす「等式」が適切である。J.S.ミルは価格と数量の関数関係を重要視していない。社会全体の総需要関数と読み取り可能な箇所は存在しているが、個別の需要関数に関しては研究すら放棄している。市場日の間において需要量を変化させる一因が価格であると言っているだけで、現代の一般均衡理論や部分均衡理論が想定するように、価格体系さえ与えられれば、一義的に需要量が定義できる関数が存在するとは言ってはいない。ミルは関数そのものを理解し、別の箇所(労働など)では関数の変数がわざわざ何であるかまで明記しているが、商品の需要量と供給量に関して関数とは明記していない。以上のことを総合すると、J.S.ミルは需要関数と供給関数自体を重要視しておらず、新古典派経済学の市場均衡理論ではなく、過程分析として価格理論を考えていた。
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Research Products
(1 results)