2016 Fiscal Year Research-status Report
処置効果推定のためのモデル平均法による反実仮想の最適予測
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16K17102
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
吉村 有博 京都産業大学, 経済学部, 講師 (40773982)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 政策評価法 / モデル平均法 / モデル選択法 / クロスセクション相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては,研究計画の主たるテーマである研究計画A「モデル平均法を用いた反実仮想の最適予測法の構築」において,個別処置効果の推定のための暫定的なモデルの構築に成功し,それに基づくモデル平均推定量の構成とその漸近的性質に関して,その基礎的な結果を得た.また,同時に進められた小規模なシミュレーション実験において既存手法を改善するといえる良好な結果を得た.現在はこれら結果を整理する段階にある.
一方,本研究計画Bの基礎的研究に位置づけられ研究計画Aと同時に進められた,セミパラメトリック部分線形回帰モデルのモデル選択法の研究において,顕著な進展を得た.具体的には,定式化を誤った回帰モデルにおいて,無限に多くの回帰変数の中から最適な変数を選択するための情報量基準を構築した.この理論的成果の一部は,本研究課題の採択以前から着手され得られた結果を部分的に含むものの,本研究課題が対象とする処置効果のモデリングと極めて密接に関連し,高い応用可能性を有することから,この成果は重要である.特に,その特定化過誤による定式化は処置効果のモデリングにおいて極めて有用であり,研究計画Bの遂行において応用が期待される.研究成果は,論文``Focused Information Criterion for Series Estimation in Partially Linear Models”として平成28年9月に査読付き学術誌The Japanese Economic Reviewに採択され,平成29年度に公刊予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度において得られた進展は,以下の二点である.一つめは,研究計画の主たるテーマである研究計画Aにおける予備的結果の導出である.年度初期より基礎的な資料収集を開始し,学会参加により得られた知見を基に,個別処置効果の推定のためのモデルを構築し,それに基づくモデル平均推定量の構成とその漸近的性質について検討した.これにより,ある限定的なケースにおけるその基礎的な理論的結果を得ることができた.またこれに伴い,推定量の有限標本性質をコンピュータによるシミュレーション実験により検証し,結果を得た.現在はこれら成果を整理する段階にあるが,理論的成果に関しては,引用予定の重要な先行研究の結果において幾つかの不備が見つかったことから、当初の想定よりも適用範囲が限定的になった点に課題があるため,論文公表には至っていない.
二つめの進展として,研究計画Bの基礎的位置づけの研究として年度初期より同時進行された,部分線形回帰モデルのモデル選択法の構築において,その成果が論文として査読付き学術誌に採択された.該当論文の理論的結果は,あくまで計画Bにおける基礎的位置づけであるという制約はあるものの,それが本研究課題の対象とする処置効果のモデリング及びモデル平均法への拡張という面において極めて密接に関連していることから,次年度における応用が期待される.
以上より,現在までの達成度としては研究計画全体としておおむね順調であると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として,当初の計画通り研究計画A,Bについて引き続き取り組む.特に,引用予定であった重要な先行研究において課題が見つかった研究計画Aに関しては,最新の周辺分野の成果を踏まえつつさらなる検討を加えることで,引き続き因子モデルからの定式化によるモデル平均法の構築に取り組む.これに加え,本研究課題が目指す個別処置効果の推定においては,クロスセクション方向の相関がある場合を構造的に考慮に入れるアプローチが有用であるという発見を踏まえて,そのアプローチから最適モデル平均予測量の構築に同時に取り組む予定である.
さらに,同時進行で比較的規模の大きなシミュレーション実験を行うことで,提案手法のパフォーマンスをより詳細に検証していく.また,残された研究期間の制約はあるものの,研究計画Cの実データを用いた実証分析を順次行う.得られた成果をまとめ,主として国内学会にて報告し,得られたコメントを反映させつつ年度末に論文にまとめる計画である.
本研究課題は計量経済学の先端的テーマの一つであり,既存研究の不備等いくつかの未知な障害が考えられるが,周辺分野における最新の成果をうまく活用することで遂行可能性の向上を図りつつ,主たる研究テーマの開発を進めていく計画である.
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Research Products
(1 results)